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 中国は長期的に経常黒字が減少する傾向にあり、わりと近い将来に赤字になる可能性もあります。その時には、資本移動でカバーしなければならない。先進国並みの自由で信頼できる金融為替制度を整えておかないと、資金が入ってこなくなる懸念があります。為替が自由化されていれば、のちのち元高に移る局面も出てきます。そうであれば、投資家も資金を投入する気になる。為替レートを市場実勢に委ねるほうが、人民元の信用が高まり、資金が入ってきやすいのです。いつまでも政府が介入しているような通貨は誰も信用しません。国際金融市場における人民元の信用を高め、みなが安心して人民元を保有できるようにする。これが中国の通貨当局が目指す方向です。

 さらに言えば、現在の中国は世界第2の経済大国として世界各国の経済と密接に結びつき、巨額の貿易取引を継続しています。この状態でドルペッグを維持することは不可能です。

米金利引き下げは中国企業に追い風

以上のお話を踏まえて、米国が直近で繰り出した3つの手が中国経済に及ぼす影響について順に伺います。まず、FRBの金利の引き下げについて。

瀬口:これは中国経済にとって追い風でしょう。米国内の内需が刺激されます。それは、中国の輸出産業に好影響をもたらす。世界経済の安定を保つという目的にもかないます。もちろん、中国が米国からの輸入を増やし、トランプ大統領を刺激しないよう配慮する必要はありますが。

 2020年には、シリコンサイクルが回復局面に入り、5G関連の需要も立ち上がると見られています。米国の内需拡大が、それまでの“つなぎ”の役割を果たすことになりそうです。

米国はファーウェイをはじめとする中国のハイテク企業を目の敵にしています。サプライチェーンからはずそうと躍起になっている。5Gの需要拡大は中国企業のビジネスチャンス拡大につながるでしょうか。

瀬口:米政府は理解していないようですが、ファーウェイは既に「世界のファーウェイ」になっていますので、中国政府にべったりの企業にはなれません。それゆえ、各国から高い信頼を得ています。その証左の1つが、英国政府機関のナショナル・サイバーセキュリティー・センターの動きです。同センターが、英国が抱えるサイバーリスクの検証を委託したのはファーウェイでした。結局は、米国の反対にあい、委託を中止しましたが。

 ファーウェイのCEOである任正非氏の発言からも、同社が世界各国から信頼されている理由がうかがえます。米中経済摩擦が緊張の度を高める中、中国国民の間で反米感情が強まり、アップルへの報復措置を求める意見が広がっていました。任氏はこれに対して、「もし、そのようなことがあれば、最初に抗議するのは私だ。アップルは私の先生だ。生徒としてなぜ先生に反対するのか」と発言したのです。こうした姿勢を示すことができる立派な経営者だからこそ世界各国で信頼されているのだと思います。

 なので、世界は結局、ファーウェイ製品を使うことになると思います。ドイツ政府はドイツ企業に対して、ファーウェイに部品を供給してもかまわないし、同社の製品(ハードウエア)を使用してもかまわないとしています。

日本政府も同社を5G通信網の構築から事実上排除した、と報じられています。早まったのでしょうか。

瀬口:いえ、日本政府はまだ決めていません。決めたのはオーストラリアとニュージーランド、カナダだけです。経済産業省の友人にも確認しました。その指導を受ける日本企業に聞いても、「ファーウェイとの取引をやめるようには言われていない」そうです。なので、日本企業は取引を継続します。

 日本企業からファーウェイへの部品供給はむしろ増えていると思います。同社は今、不測の事態に備えて在庫の積み増しを進めていますから。

制裁関税第4弾の行方は、大統領選しだい

対中制裁関税第4弾の影響はどうでしょう。

瀬口:これは読み切れないところです。しかし、3000億ドル分の対米輸出に対する10%の関税にとどまれば、ネガティブな影響はそれほど大きくはないでしょう。元安である程度は吸収できると思います。