米ニューヨークで、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が始まった(写真:ZUMA Press/アフロ)
米ニューヨークで、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が始まった(写真:ZUMA Press/アフロ)

 8月1日、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が米ニューヨークで開かれ、岸田文雄首相も出席し演説した。同じ日にジョー・バイデン米大統領も声明を出し、不確実性と大変動の今日ほど、NPTが定める諸原則へのコミットメントが決定的な意味を持つことはないと述べた。

 NPTは、1970年に発効し、現在、約190カ国が加盟している。加盟国に核不拡散の義務を課すものだ。1966年までに核兵器を保有していた米ソ(当時)英仏中の5カ国を「核兵器国」とし、それ以外の「非核兵器国」の核の保有は認めないという不平等な基本構造を持つ。この5カ国は国連安全保障理事会の常任理事国でもある。NPTは、「核兵器国」には核軍縮の義務を課し、「非核兵器国」には原子力の平和利用の支援をすることでどうにかバランスを保っている。

 NPTは国際的な核軍縮・不拡散体制の要であるのみならず、核兵器に関する多国間の国際的枠組みは、これ以外にない。

 非核兵器国がNPT体制の不平等を甘受してきたのは、核兵器国が核軍縮の義務を果たすと約束しているからだ。ところが不拡散の義務履行を厳しく要求する割には、核兵器国の核軍縮は進まない。非核兵器国の不満は当然、高じる。この不満が2021年に発効した「核兵器禁止条約」を推進する原動力となった。

 この流れはNPT体制を動揺させかねないというので、本年1月、米ロ英仏中の5核兵器国が声明を出し、NPTの核軍縮義務を果たすことを再確認した。ところが、2月にロシアがウクライナに侵攻。さらに核を使用する可能性を示唆して恫喝(どうかつ)した。核をめぐる国際情勢は大きく動揺している。

核拡散の懸念が増大

 このNPT体制は、核拡散の懸念の増大という挑戦を受けている。インドは、中国の核への懸念から、1998年に再度の核実験を行い、実質的な核兵器国となった。NPTには入っていない。これに対抗してパキスタンも98年に核実験とミサイル発射実験を行い、インドに続いた。北朝鮮は、あと一歩のところにいる。イランは核保有の意図を隠さない。

 北朝鮮が核兵器を保有すれば、日本や韓国の核保有論を誘発する。核保有のハードルが下がれば、当然、台湾も関心を持つ。イランが核兵器国となれば、イスラエルが核保有を公に認め、サウジアラビアが核保有に向けて突き動かされるであろう。こうした動きは、米国が供する「核の傘」の信頼性と密接不可分の関係にある。核戦争の可能性が出てくれば、抑止力を強化するために核保有を考える国はもっと増えるだろう。

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