オコンジョ氏は世界銀行の専務理事を務めた経験も持つ(写真:AP/アフロ)
オコンジョ氏は世界銀行の専務理事を務めた経験も持つ(写真:AP/アフロ)

 前回は、ンゴジ・オコンジョ=イウェアラ(以下、オコンジョ)氏がナイジェリアの財務相として奮闘した4年間を振り返った。今回は、その経験を凝縮した、同氏の「改革10カ条」を玩味する。

(1)改革には台本が必要だ(Reforms need a playbook)
 オコンジョ氏によれば、およそ改革には「台本」が必要だ。台本は、①改革のビジョンと戦略、②目標を実現するための綿密な計画、そして③可視化できる成果、のパッケージでなければダメだと言う。

 改革がなぜ必要か、どう進めるのか、どんな利益があるのかを国民に理解させ、実動部隊である各界のエリートに納得ずくで改革に取り組ませる。そのための、共通の作戦図面がこの「台本」である。

 オコンジョ氏はナイジェリア財務相と兼任で、大統領直属の経済改革チームのリーダーに就任するや否や、国家改造の青写真を一気呵成(かせい)に起案した。この17ページからなる草稿を、チームの同僚と夜更けまで鳩首(きゅうしゅ)し、その結果を「国家経済強化開発戦略」(NEEDS: National Economic Empowerment and Development Strategy)と呼ぶ基本方針とした。

(2)コミュニケーションが大切だ(Communications is important)
 意思疎通が重要であることは論をまたない。これを説かないマネジメント本は世の中に存在しないと言っても過言ではない。それほどに、意思疎通に万能薬はなく、どこの世界でも人を悩ます種なのだろう。

 オコンジョ氏は本書で、改革者は以下の3つを分かりやすい言葉で述べることが大事だと強調する。第1は、なぜ改革が必要か。第2は、経済社会が抱える現状と課題。そして第3は、改革の手法と想定される結果だ。

 さらに、あらゆる地方、階層、利害関係者に会うべく行脚し、ひざ詰めで説明を尽くすのがコツだ、と説く。これを継続することで効果が定着する。

 民主主義において最も強いのは有権者・納税者であることを同氏は熟知している。同氏が有権者や納税者に向けて効果的な発信を心がけたことは、不正蓄財の国庫返納を「納税者への払い戻し」と名付け、それを元手になした成果を民生事業として可視化したエピソードに表れている。

「結果にこだわれ」、そうでなければ推進力を失う

(3)結果にこだわれ。そして市民社会と公衆を参画させるべし(Focus on results and enlist civil society and the public)
 意思疎通は重要だが、これはあくまで、改革を国民運動に広げるための「手段」にすぎない。「結果」が伴わなければ、改革は途端に推進力を失う。「言うだけ番長」は、その真の姿が明らかになった瞬間に最後を迎える。掛け声倒れに終わらないためには、改革を法律や制度にビルトインし、市民社会や国民にその運用を担わせるのが肝心だ。

 例えば、オコンジョ氏が導入した地方政府による月例の歳入報告・公開は、改革の成果が制度に昇華した好例だ。この仕組みは、オコンジョ財務相が辞任した後、守旧派の巻き返しにあい、いったん停止された。しかし、国民の強い要望で復活を遂げた。オコンジョ氏は既に政権の外にあったものの、改革が民意を得て自律的に回復・進展した動きに自信を深めたという。

(4)改革チーム、経済チームを作れ(Build a reform team or an economic team)
 オコンジョ氏がものした回顧録『Reforming the Unreformable(改革不可能なことを改革する、著者仮訳)』は、大統領直属の改革チームに参加した同僚たちの働きぶりを見事に活写している。まるで、日本の明治維新期に国造りを進めた群像を描く大河小説を読んでいるようだ。

 オコンジョ氏は米国から帰国する際、世界銀行の同僚から寄せられた助言を実践した。いわく、「一番大事なのは、改革をやり抜くタフな同志を集めることだ」「少なくとも週イチで会議を開け」。

 「何」をしているかよりも「誰」が担当しているかを気にするのは、我々のどの組織でもよく耳にする話だ。オコンジョ氏も回顧録において、改革チームを立ち上げる際の人選をめぐる逸話に多くのページを充てている。同氏が必要と説く「改革遂行に専従する強いリーダー」に自ら就いて、「チーム」(ここでは、大統領直属の経済改革チームを指す)を率い、6人だった小所帯を22人に拡充した。それぞれの分野のプロを任ずるメンバーが、責任と権限を分有し、週1回は顔を合わせて本音で議論した。

続きを読む 2/3 戦線を広げすぎず、個別撃破せよ

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