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 ボリス・ジョンソン氏が24日、英首相に就任した。EU(欧州連合)からの合意なき離脱を辞さない構えを鮮明にしているが、実際には英議会の反対があり、メイ前首相と同じように袋小路に入ってしまう可能性がある。ジョンソン新首相はどのような打開策を考えているのか。大和総研ロンドンリサーチセンター長の菅野泰夫氏に話を聞いた。

ボリス・ジョンソン前英外相が保守党党首に選任され、7月24日、英首相に就任しました。新首相の最大の懸案事項は、10月末に迎える英国のEU(欧州連合)離脱です。どのような展開を予測しますか。

菅野泰夫氏(以下、菅野):ジョンソン新首相はEUとの間の関税同盟を継続するバックストップ案を修正しない意向を示しており、「合意なき離脱」を受け入れる姿勢を強めています。EUからの譲歩を引き出すための戦術にも見えますが、フォン・デア・ライエン次期欧州委員長は英国との再交渉には応じない方針を示しているため、合意なき離脱の可能性は高いと考えられます。

ジョンソン前外相は24日、英首相に就任した(写真:Jeff J Mitchell / Getty Image)

合意なき離脱となった場合の対策は練られているのでしょうか。

菅野:ここに来て保守党の中からバックストップの代わりとなる具体案が出てきました。それは保守党による代替措置委員会が7月中旬に出した報告書です。

 合意なき離脱となれば、英国の北アイルランドとアイルランドの国境にハードボーダーが必要になります。報告書には国境検査所の代わりに移動検査ユニットの導入や、企業規模に応じた通関検査の簡素化などが盛り込まれています。これらの対策は3年以内に実施できるという触れ込みです。従来はハードボーダー対策が漠然としていましたが、かなり具体的になってきた印象です。

菅野泰夫(すげの・やすお)氏
1999年大和総研入社。年金運用コンサルティング部、企業財務戦略部、資本市場調査部(現金融調査部)を経て2013年からロンドンリサーチセンター長兼シニアエコノミスト。研究・専門分野は欧州経済・金融市場、年金運用など

 保守党はブレグジット交渉を通じて支持率を低下させ、欧州議会選などでは強硬離脱を訴えるブレグジット党などに票を奪われてきました。支持率回復のために強硬離脱のスタンスを明確にする必要があり、合意なき離脱は不可避ではないでしょうか。

英議会は合意なき離脱に反対してきました。どのように議会を説得するのでしょうか。

菅野:説得は難しい状況です。そこでジョンソン新首相の側近の間では、驚くべきプランが浮上しているようです。それは、英議会の休会中に、合意なき離脱を強行するというプランです。少し複雑なので、英議会の仕組みから説明します。