ミャンマーの経済チーム再編

 一連の報道によれば、スーチー政権が経済問題に本格的に取り組み始めたのは、政権発足から2年が経過した2018年ごろだとされる。2018年11月21日付の日本経済新聞「ミャンマー経済特集」では、ミャンマーの政治経済の現状を幅広く分析している(この特集に限らず、ミャンマーの政治経済の動向については、日経新聞の一連の記事が参考になる)。

 ただし、経済チーム再編のきっかけは現職閣僚の汚職疑惑であった。2018年5月、当時の計画・財務省兼ミャンマー投資委員会委員長であったチョーウィン氏が収賄の疑いで辞任した。同氏には博士号の学歴詐称疑惑もあった。また同氏の息子も収賄に関与した疑いがあったという。スーチー氏の盟友の一人とされていた同氏の辞任は、政権が経済政策に本格的に取り組む機会となった。

 チョーウィン氏辞任後の2018年6月、政権は後任の計画・財務相に、ソー・ウィン氏を起用した。同氏は、NLDの創設メンバーの1人で、民間企業の経営経験もあり、同党屈指の経済通と言える。就任時で既に79歳という高齢を不安視する向きもあるが、2017年に同省副大臣に抜てきされていたセ・アウン氏など、有能な若手が支える体制が整っている。

 セ・アウン氏は、テイン・セイン前政権で経済顧問や中央銀行副総裁などを歴任し、NLD政権で計画・財務省の副大臣に任命された。同氏は「ミスター特区」とも称され、投資促進の立役者とされる。実際、同氏は、日本企業のミャンマー進出の拠点となっているティラワ経済特区と、中国の影響が強いとされるチャオピュー経済特区それぞれの管理委員長も兼任している。

 他方、ミャンマー投資委員会委員長には、外交官出身のタウン・トゥン氏が国家安全保障顧問を兼任したまま就任した。計画・財務大臣の兼任を外したことは、投資誘致への積極姿勢の表れの1つと言える。さらに、11月には計画・財務省内にあった企業投資管理局と対外経済関係局を統合して投資・対外経済関係省を新設し、大臣にはタウン・トゥン氏が委員会委員長のまま就任した。

 ジェトロの短信によれば、これまでの投資委員会は投資申請に対する許認可機関という受動的な役割を担うことが多かったという。新設省庁の設置は、NLD政権の投資促進姿勢を制度化する動きの1つと言えるだろう。

NLDが政権を取ってまだ3年

 経済チーム刷新と省庁再編は、スーチー政権が経済問題に本腰を入れ始めたことの証左と言える。特に、外資誘致のための重要ポストが再編されたことが重要だろう。東アジアの経済成長は積極的な外資の導入により実現した歴史があり、ミャンマーもまたその軌跡に乗るべく軌道修正を図っていることが読み取れる。政権発足から3年以上がたったと言えば歩みは遅いかもしれないが、民主化運動をけん引したNLDが政権を取ってまだ3年とも言える。その政権が、経済問題に本格的に取り組み始めてようやく1年と考えれば、ミャンマー政府の経済運営はこれから大きく前進する可能性もある。ミャンマーに経済成長の政治が定着するかどうか、本格始動した経済チームの動向を注視したい。

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