中国国家統計局が2021年4~6月期のGDPを前年同期比7.9%増と発表した。けん引役は外需で、予測を上回って拡大した。新型コロナ禍で生産が滞る国の代替生産需要が依然として残っている。内需に目を転じると、今期に力強さを示し、下期の成長ドライバーとなりそうなのが、企業の設備投資だ。生産設備の稼働率が高止まりしている。欧米企業は、対中ビジネスに注力する姿勢を崩していない。

(聞き手:森 永輔)

新型コロナ感染のクラスターは散発しているが、消費は堅調だ(写真:AP/アフロ)

瀬口 清之・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口):今回は、2021年4~6月期の中国経済を振り返りたいと思います。中国国家統計局 が7月15日、同期の実質GDP(国内総生産)を前年同期比7.9%増と発表しました。新型コロナ禍からいち早く脱却した中国経済はほぼ巡航速度を取り戻したと評価できます。

 7.9%増は、1~3月期の同18.3%増に比べて伸び率が大幅に低下したように見えます。しかし、4~6月期も着実な回復傾向を維持したとみてよいでしょう。1~3月期の18.3%は、2020年1~3月期に新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きくへこんだ反動が強く働いています。

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:丸毛透)

 今年の経済指標を前年同期比で見る場合、前年の指標が新型コロナ禍の影響で大きく変動しているため、実態がよく分からなくなってしまいます。そこで、その影響を受ける前の2019年の各期と比較して2年間の平均成長率を見る方が足元の経済実態をより分かりやすく理解できます。4~6月期の2年平均増加率は5.5%増で1~3月期の同5.3%増を上回っており、着実な回復傾向が続いていることが分かります。

輸出が予測を上回る拡大

2021年4~6月期の安定成長をけん引した要因は何ですか。

瀬口:事前の予測よりも外需が伸び、けん引しました。4~6月期の7.9%増の成長率を分解すると、外需の寄与度が0.8%、内需が7.1%でした。2010~2019年平均の外需の寄与度はマイナス0.2%でしたから、その大きさがお分かりいただけると思います。

 外需が強かった要因は2つあります。第1は、代替生産の需要が続いたこと。他の国の生産能力が依然として回復していないため、中国企業がこれを代わって生産しています。この新型コロナ特需はそろそろ落ち着くとみられていましたが、予想以上に続いているのです。

 第2の要因は欧米でワクチン接種が進み、需要が回復してきたことです。欧米向けの輸出が堅調でした。

 しかし、いずれの要因も次第に縮小するのは確実です。どの国でも生産能力は遠からず回復するでしょう。欧米諸国の需要も、今は急回復期にありますが、次第に伸び率が安定してきます。

 ちなみに中国からの輸出を国別にみると、4~6月期は米国向けが前年同期比23%増、欧州向けが21%増、ASEAN(東南アジア諸国連合)向けが39%増、アフリカ向けが38%増でした。

不動産投資は実需を伴い安定

内需はどのような具合だったのですか。

瀬口:7.1%増と安定的に成長しました。ただし、外需とは対照的に予測をやや下回る結果でした。投資を①不動産、②インフラ、③企業の設備投資に分けて概観しましょう。

 1~6月期の不動産投資は前年同期比15.0%増(2年平均8.2%増)と堅調でした。大都市を中心に実需がある上、コロナ対策として実施されている緩めの金融政策により不動産市場にマネーが流入しているからです。ただし中国政府が不動産バブルを懸念して不動産関連融資に対する慎重な姿勢を崩さないため、その伸び率は安定しています。1~3月の不動産投資は前年同期比は25.6%増(同7.6%増)でした。

 政府は2020年夏以降、不動産デベロッパー向けの融資を絞っています。このため資金繰りが苦しくなっており、彼らはまず手持ちの在庫を売って資金をつくり、それを新たな投資に充てる、という動きをしています。

続きを読む 2/4 インフラ建設投資は「ふかす」必要なし

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