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 米中両国が対立のラダーを上ってきた根本原因は、両国の認識の違いです。米国は現状を安定させることが正しいとの立場に立ちます。一方、中国にとっては、中国の偉大な復興を実現することが重要。かつて誇っていた威勢を取り戻すべく勢力を拡大させること、南シナ海におけるコントロールをより強力にすることが正しいことなのです。これを実現する手段が国際法にのっとっているかどうかは問題ではありません。「Rule of Law」ではなく「Rule by Law」です。

南シナ海における軍事プレゼンスを一層強め実を示す

「中国に領土を侵害されていると考えるすべての国を支援する」ため、米国は具体的にはどんな行動を取るでしょう。

小原:特に南シナ海において軍事的なプレゼンスを一層強め、中国に対するプレッシャーを高めていくと考えます。

 既に、そうした動きを強めています。米海軍が7月17日、ニミッツとロナルド・レーガンを南シナ海に派遣し、防空演習を実施しましたことを明らかにしました。これは7月4日に続き、2度目のものです。こうした行動は米軍の圧倒的なパワーを示すことになります。

 また14日には、ミサイル駆逐艦を南シナ海に派遣し、「航行の自由作戦」*も展開しています。今後も高い頻度で、また必要に応じて、演習や航行の自由作戦を展開することになるでしょう。

*:ある国が公海における航行の自由を侵そうとする場合、その海域に軍艦や軍用機を派遣し、公海であることを示す作戦

 加えて、インド太平洋軍が軍事力の展開についての新しい構想を示しました。今年発表した報告書「Regain the Advantage」の中で、敵から攻撃を受けたときに生じる被害と、こちらの攻撃の有効性とのバランスを改めて取るという方針を明らかにしています。中国の攻撃から身を守るため安全なところまで退く一方、機動性を高めて、相手が予期せぬタイミングで予期せぬ場所を攻められるようにする。

 戦略爆撃機「B-52」の部隊をグアムから本国に移転したことをもって米軍のプレゼンスが下がったという見方がありましたが、それは事実と異なる見方だと思います。B-52は今も東アジアの空域を飛んでいます。

 ただし、中国と戦争する意図は米国にありません。あくまで「姿勢」を示すことが目的です。トランプ大統領の興味は経済にしかありません。

米軍が電子戦を担う特殊部隊を南シナ海に派遣することが報じられました。

小原:それもプレゼンス拡大策の一環でしょう。ただし、中国軍に対してジャミング(電波妨害)を行うなどの直接行動にすぐに出るものではないと思います。まずは、周辺の電波情報の収集・分析から始める。電波を追うことで、どこにどういう部隊が居て、何をしているか、をかなり把握することができます。

想定される中距離核の軍拡競争

軍事プレゼンスを拡大する一環として、中距離核戦力(INF)の配備も考えられますか。INF廃棄条約が2019年8月に失効しました。これを踏まえて、米軍がアジアのどこかに中距離核戦力を配備する話が浮上しています。