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それでも、基地の提供はスタート地点

 日本はその後、湾岸戦争に臨んで海部俊樹首相(当時)が自衛隊による貢献に一歩を踏み出したのを皮切りにさまざまな努力をしてきました。国連PKO(平和維持活動)への参加、後方支援に対する地理的限定の削除、イラク戦争やアフガニスタン戦争での貢献--。

 これらは米国を直接防衛するものではありません。しかし、日本は確実に貢献してきました。それが、トランプ大統領の目には入っていません。

 また、日本の基地がなければ、米国は西太平洋からインド洋にかけて前方展開することができません。日本はその基地の経費も多額を負担しています。トランプ大統領がこうした日本の貢献について語るのを聞いたことがありません。彼は米国と日本の関係は、米国とNATOの関係とは異なるのを理解していないのです。同盟国の役割を、互いを「守るか」「守らないか」という狭い範囲に限定してしか見ていない。

日本の一部には以下の意見があります。日本が提供する基地の価値は非常に大きい。米国が負担する防衛義務とバランスが取れている。これ以上、日本の負担を増やす必要はない。これをどう思いますか。

ホーナン:基地の提供と米軍駐留経費の負担は「ベース」になっています。日本は「平成」の時代に安全保障法制を成立させました。「令和」の時代は、同法の下で何を実行するかが問われると思います。

米軍駐留経費の増大は日米に不満をもたらしかねない

令和の時代に何をするか。次の4つの案があります*。評価を聞かせてください。第1は、米軍駐留経費の負担を拡大させる、です。

*:防衛大学校の武田康裕教授が、以下の案を実現するプランや装備を具体的に設定し、必要なコストを試算している。概要は「日米同盟へのトランプ氏の不満、解消にかかる金額は?」を参照。

ホーナン:その案は、日米双方が不満を残す結果になる恐れがあります。日本が100%負担すれば米国は満足でしょう。「家賃がただ」なわけですから。

でも、その場合は、日本国内で日米地位協定の改定を求める世論が高まるでしょうね。

ホーナン:おっしゃる通りです。では、現行の水準と100%との間のどこを落としどころとするか。日本は、負担するパーセンテージを増やすたびに「この上昇がいつまで続くのか」という不信感を抱くことになります。一方、米国側も「もっと増やすことができるのでは」と考える。

ミサイル防衛システムの拡充は「ウィン・ウィン」

第2の案は、ミサイル防衛システムの拡充です。新たにTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を加える。迎撃ミサイルは現在、イージス艦に搭載するスタンダードミサイル(A)と、地上に配備するパトリオットミサイル(B)で構成しています。これにイージス・アショア(C)を追加することが決まっています。(C)は(A)を地上に配備する仕様のものです。THAADを加えることで、弾道ミサイルの軌道のミッドコース(弾道の頂点)とターミナル段階(大気圏に再突入し着弾に至る過程)のカバーを強化することができます。

ホーナン:これはよいですね。日本、在日米軍、そして米軍のみなに利益をもたらします。この分野はすでに日米の協力が進んでいますが、協力をさらに深められる分野です。

第3の案は、シーレーン防衛のため、空母を導入する案です。F-35Bを48機搭載できるクイーン・エリザベス級の空母を3隻導入し、それぞれを中心に3つの空母打撃群を構成する。1つの打撃群は6隻の護衛艦(うち3隻は艦隊防空を担うイージス艦)、2隻の潜水艦、1隻の補給艦で構成する。

ホーナン:理論的には良い案だと思います。しかし、実現が難しいのではないでしょうか。3つの空母打撃群を運用するには、それ用の訓練を受けた多数の人材が必要です。今の海上自衛隊でそれを賄えるでしょうか。最も適切な質問は、日本に空母が必要かどうか。私はまだ100%確信してはいません。