米ランド研究所で日本の防衛政策を研究するジェフリー・ホーナン氏に、ホルムズ海峡をめぐる問題を聞いた。戦争には至らずとも戦闘はあり得る。そのとき米国は、日本に後方支援を求めると見る。「安保法制を成立させ、積極平和主義を掲げる安倍政権への期待が高まっている」(同氏)という。(聞き手 森 永輔)

米国のダンフォード統合参謀本部議長が7月9日、ホルムズ海峡などの安全確保と航行の秩序維持を目的とする有志連合を結成すべく、関係国と調整していると明らかにしました。日本政府も打診を受けたとされます。米国は日本に何を求めるのでしょう。
ホーナン:現時点で最も可能性が高いのは海上警備行動でしょう。
海上における警察の役割ですね。タンカーを護衛する。
自衛隊法 第82条
防衛大臣は、海上における人命若(も)しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。

ランド研究所、笹川平和財団日米グループVisiting Fellow (2019年7月)
米ランド研究所で日本の防衛政策・態勢、外交関係や、日米同盟の課題などを研究。米マーケット大学を最優等で卒業(国際関係専攻)。米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で国際関係の修士(日本研究専門)、米ジョージ・ワシントン大学で政治学の博士号を取得。博士課程在籍時に、フルブライト奨学生として東京大学の客員研究員を務めた。その後、オハイオ州立大学東アジア研究センターや米ホノルルのダニエル・K・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センターで教職を歴任(撮影:菊池くらげ、以下同)
ホーナン:はい。多くの日本のタンカーがホルムズ海峡を航行して、原油を運んでいます。この海域に対する日本の依存度は高いですから、自然な求めだと思います。
私は米国とイランが戦争(war)に突入することはないと見ています。どちらも、やりたくないでしょうから。
米国の事情を考えてみましょう。アフガニスタン戦争で戦ったタリバンは軍閥のようなものです。イラク戦争で戦ったイラク政府軍の戦闘能力は米軍とは圧倒的な差がありました。それでも戦争は長期にわたりました。これらに比べてイランの軍は実力を伴った正規軍です。終わりが見えない戦争になります。よって、戦争には決してしたくないと思います。
加えて、緊張が戦争に発展すると、イランがイスラエルを攻撃しかねません。戦争が中東全体に波及することになる。これは米国の国益にかないません。そのような事態になれば、米国はイランの体制転換を図るでしょう。
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