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日本は、日本の船を守るのか

日本は有志連合に加わるべきでしょうか。

香田:これは、考えておくべきことの1つ目と関連します。日本の船を日本の政府や自衛隊が守るべきか否かを決心する必要がある。

 自衛隊を海外に出すことに依然として抵抗があるようです。しかし、日本の船舶を守るのは日本しかありません。もちろん、憲法の枠内で行動するのが前提です。

 政治的判断として「守らない」という選択もあり得ます。ただし、その時は船員の生命をどう考えるのか、という問題が生じます。エネルギーの安定供給も保証できません。

 日本の船舶を日本政府が護衛するのに、集団的自衛権の議論は必要ありません。日本政府も自衛隊もイランの現状において集団的自衛権を行使することは考えていないでしょう。やってはいけないことです。

日本の船は日本が守る、と決心した場合、どのような法的根拠で護衛艦を派遣することになるのでしょうか。

香田:まずは海上警備行動。この時、武器の使用については、警察官職務執行法第7条(正当防衛・緊急避難)にのっとることになります。

 場合によっては、特別措置法を制定することになるかもしれません。

武力攻撃に至らない侵害に迅速に対処し、不法行為に切れ目なく対応すべく、政府は2015年、海上警備行動の発令手続きを迅速化するための閣議決定をしました。

 先ほど、第三国の船舶も護衛対象にする可能性をお話しいただきました。これは、海上警備行動で可能ですか。

自衛隊法 第82条
 防衛大臣は、海上における人命若(も)しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。

香田:無防備の第三国の船舶が、護衛艦の至近距離において武装勢力に襲われるケースですね。こうした事態への対処は事前に決めておく必要があります。憲法違反の疑義があるならば、「助けない」という選択になります。

 ただし、遭難など、海の上で困っている人がいたらお互いに助け合うという不文律があります。「海員の常務」と呼ばれるものです。これを適用することは可能です。自力で自国の船舶を守る力を持たない国と外交交渉をし、護衛対象にすることもあり得るでしょう。人道支援と考えることもできます。

「米艦防護」の必要はない

ダンフォード氏は、「警戒活動を指揮する米国の艦船」も護衛の対象に想定しているようです。自衛隊が「米艦防護」を求められることはありませんか。2015年に成立した安保法制で、平時において自衛隊自身が保有する武器などを防護するために武器が使用できるのと同様に、米軍の艦船や航空機を防護するための武器使用が可能になりました。

香田:それはありません。米国の艦船は、自衛隊に護衛してもらわなくても、自力で守れます。

 考える必要があるとすれば、極めてまれなケースですが、エンジンが故障した、電力が供給できなくなった、といった不慮の事故に米国の艦船が見舞われた時でしょう。これについては、どのように対処するか、政府は事前にルールを決めておく必要があります。先ほど触れた「海員の常務」と解釈することもできます。