日韓豪ニュージーランド、4カ国の首脳が、NATO首脳会議に加わった(写真:AFP/アフロ)
日韓豪ニュージーランド、4カ国の首脳が、NATO首脳会議に加わった(写真:AFP/アフロ)

NATOが6月29日、新しい「戦略概念」を承認した。中国に初めて言及し「中国の野心と強圧的政策は、我々の利益、安全及び価値に対する挑戦だ」と認定した。欧州と米国は対中国で共同歩調を取る。さらに、これに日韓豪ニュージーランドが加わった。中国は現行の外交路線を改めるべきだが、そうできない4つの理由がある。

 6月29日、NATO(北大西洋条約機構)加盟国の首脳は新しい「戦略概念」を承認した。ロシアを最も重要かつ直接の脅威と位置づける一方、中国に初めて言及し「中国の野心と強圧的政策は、我々の利益、安全及び価値に対する挑戦だ」と認定した。

 NATOは1949年、増大するソ連の脅威に対抗するために、欧州と米国が大西洋をまたいで構築した軍事同盟である。NATOはソ連が崩壊した後、ある意味で“漂っていた”が、ロシアを主敵とする安全保障機構として復活した。しかもNATO加盟国は現在30カ国を数える。当初の12カ国から徐々に増え、99年以降は旧ソ連・東欧の多くの国々が参加した。いずれスウェーデン、フィンランドも加盟する見込みだ。

 加えて、中国を初めてNATOの守備範囲に組み込んだ。西側対中ロの冷戦構造が姿を現し始めたのだ。

 NATOのこの動きは中国にとって決して望ましい流れではない。中国外交部スポークスマンの趙立堅氏は6月30日、次のように反応した。「事実を顧みず、黒白を転倒し、“系統的挑戦者”という間違った中国の位置づけに固執し、中国の対外政策、国防政策にあれこれ言い、対抗と対立をあおり、冷戦思考とイデオロギー的偏見に満ちている。中国は重大な関心を持ち、断固反対する」

 中国の対外強硬姿勢は、習近平(シー・ジンピン)政権の登場とともに2012年以降、加速した。トランプ米政権(当時)との間に米中の全面抗争を引き起こした。習近平政権は、米国との抗争が長期にわたることを覚悟した。そこで、米国との直接対決は避けながら、「核心的利益」と認定する問題については譲歩せず、膠着状態を続ける対米基本方針を取った。それは、時代は「東昇西降」だと認識し、時間は米国に不利に、中国に有利に働くとの判断に基づく。

米欧一体化で崩れる長期戦略の前提

 しかし、この対米長期戦略は、欧州が中国との関係において、米国と付かず離れずの関係を保つことを前提として初めて成り立つものであった。

 米欧が一体化すれば、話は別だ。米欧は、経済規模において中国のほぼ3倍となり、しかも技術開発力に優れている。その米欧主導の国際経済に、中国経済は深く組み込まれている。米欧の一体化は、中国の基本戦略を動揺させ、中国にとり著しく不利であり、悪夢とも言えるものなのだ。

 習近平政権は、欧州との関係が悪化し始めたにもかかわらず、関係修復の努力をしなかった。高をくくっていたのだろう。むしろロシアとの接近を演出することで米欧をけん制しようとした。そのハイライトが2月4日の習近平・プーチン会談であり、共同声明であった。これまでの欧州諸国との付き合いから、それで欧州の動きをけん制できると判断したのだろう。

 しかしこれが裏目に出た。2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、欧州、そして世界は変わった。NATOは東西冷戦時の状況へと回帰し、中国とロシアを同一視するようになった。西側対中ロという「冷戦構造」ができ始めたわけだ。

 今回のNATOの新戦略概念は、その厳しい現実を中国に突きつけた。単に経済のみならず、軍事安全保障においても米欧の一体化が進んだ。さらに、安全保障を中核とする地政学的対立だけではなく、民主対専制というイデオロギー対立も重要な柱となった。

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