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日本政府が世界から非難されることになるとしたら、徴用工訴訟をめぐる問題が良い方向に動いたとしても本末転倒ですね。

 そもそも、今回の措置は目的に照らして適切な選択なのでしょうか。徴用工訴訟への対応を進めない韓国政府に対する「事実上の対応措置」といわれます。3製品の輸出管理を厳格にすることで、韓国政府の姿勢が変わるのでしょうか。むしろ、いたずらに、韓国内のナショナリズムを刺激することになりかねないのでは。

向山:私も、そこを懸念しています。

 おそらく、日本政府もそうしたことを想定していると思います。私は、個別審査制にしたというのは、日本政府が状況をみながら輸出をコントロールできるようにするためだと考えます。輸出を禁止するのではなく、韓国政府の対応や経済への影響を見ながら調整する。

 とはいえ、日本はもう少し我慢できたのでは、と思います。今回の措置は日本が先に手を出したという印象を与えてしまいました。日韓請求権協定に基づいた解決策を探るのが賢明だと思います。現在進めている仲裁委員会の設置、それがだめなら国際司法裁判所への提訴という具合に。時間はかかりますが。

韓国の対抗措置は歴史認識問題にいきかねない

韓国政府は対抗措置を講じる方針を明らかにしています。康京和(カン・ギョンファ)外相は「だまっているわけにはいかない」と明言しました。韓国はどんな対抗措置が取り得るでしょう。

向山:可能性はいくつか考えられます。第1は、今回の3製品について代替製品を探し、日本離れを加速させる。第2は日本からの輸入および日本への輸出を制限する。政府の調達から事実上日本企業を排除する。第3はWTOへの提訴ですね。ただし、いずれも、短期的には効果は望めません。

 代替品探しについて、3製品において日本企業が7~10割近いシェアを持っているといわれています。代替品を短期間で探すのは不可能でしょう。

 日本からの輸入を制限する措置は、韓国が自分で自分の首を絞めることにつながります。日韓はお互いに中間財を輸出入していますから。加えて、逆に韓国がWTO違反に問われる可能性があります。韓国は90年代まで、対日貿易赤字を削減すべく、輸入先多辺化品目制度と呼ぶ措置を講じて、自動車関連製品や家電、工作機械の輸入を制限しました。しかし、韓国がOECD(経済協力開発機構)に加盟する際に自由化が必要となり、撤廃することになりました。

 日本への輸出を制限する措置は大きな効果が見込めません。日本企業も国内で韓国製の半導体を利用していますが、韓国の輸出は主として中国に向かいます。つまり、日本企業が中国で運営する工場で、韓国製の半導体が利用されているのです。

 韓国政府が、日本が今回決めた措置をWTOに訴えても、違反と認めさせるのは難しいでしょう。経済産業省もその点は十分に考慮したと思います。ですが、影響が韓国以外に広がれば、日本への風当たりが強くなります。

韓国が貿易をめぐって有効な対抗措置を取るのは難しいわけですね。そうなると、浮上するのが歴史認識問題です。

向山:おっしゃる通りですね。例えば徴用工像の設置などを、今は地方政府が抑え込んでいます。こうした行動を容認するようになるかもしれません。

 こうした事態になれば、日韓関係は一段と悪化しかねないでしょう。おそらく、日本政府は、そうした事態にならないよう輸出管理をコントロールするつもりだと思います。