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米中ともに、国内に強硬派を抱える(写真:AP/アフロ)

 日本がホストした今回の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、改めてその重要性を世界に再確認させたと言ってよかろう。首脳宣言において「保護主義」という言葉はなかったが、自由貿易の原則は明記し、WTO(世界貿易機関)改革を進めることで合意を見た。日本が提唱する「大阪トラック」(データ流通、電子商取引に関する国際的なルール作り)も、この文脈の中で意味を持つ重要なイニシアチブだ。

 成果は不十分、見通しは不明との厳しい評価もある。だが、世界の流れが、ルールよりも力、交渉よりも既成事実の押しつけに向かいかねない状況下で、よく健闘したと評価すべきだ。

 定期的な首脳会議を含む国際対話のメカニズムは万難を排して生き残らせるべきだ。首脳会議というものは、休み時間でも待ち時間でも、いつでもできる。もちろん正式に時間をとって会談をしてもよい。首脳同士の意思疎通を図るきわめて重要なメカニズムなのだ。

変わらぬ、対立の基本構図

 その中で最も関心を集めたのが米中首脳会談であった。米中交渉の継続が確認され、対中追加関税も先送りされ、米企業が華為技術(ファーウェイ)に部品を販売するのも認められることになった。これで世界は一息ついたということだ。

 だが、その先に目をやるといかに厳しい現実が待っているか、すぐに分かる。本年5月、米中が交渉を中断せざるを得なかった基本構図はそのままだからだ。米国があらゆる手段を使って中国の台頭を押さえつけようとし、中国がそれに徹底抗戦――これがその構図だ。

 その象徴が技術をめぐる覇権争いであり、当面、ファーウェイ問題に集約される。中国がこの問題の解決なしに米国と合意することはないと見られていたし、ドナルド・トランプ大統領もこの問題での譲歩をほのめかして、中国側の歩み寄りを促そうとしていた。米国は今回、そのトランプ流の交渉術を使って交渉継続の合意に持ち込んだのだろう。中国側は農産品の購入を約束したようだし、北朝鮮問題をめぐっては習近平国家主席が直前に訪朝し、トランプ大統領に土産を準備した。

 しかしワシントンに目を向ければ、力で中国を押さえ込もうと考える対中強硬派の勢いは衰えていない。トランプ政権の中にも対中強硬派は多い。今後の米中折衝の中でファーウェイに関し、今回の首脳会談において果たして何が約束され、その具体的な中身は何だったのかについて、米中の間でもめる可能性は甚だ大きい。

 トランプ大統領の記者会見での発言を聞いてもよく分からない。ファーウェイに対する米国政府の措置は米国の「国家安全保障」の観点からなされているものであり、大統領の一存で勝手に中身を変えられるものではないだろう。今回の合意の中身といわれるものが、米国内の政治状況に応じて変わっていく可能性さえあるのだ。

 「チャブ台返し」外交は、人から「信頼」を奪い、合意の成立を著しく困難なものにしてしまう。米国がこれ以上の制裁を科さないと約束の上、今年5月の時点に戻り交渉を再開することにしたとしても、何が再交渉のベースなのかについて、またもめるだろう。