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 米朝双方は2月のハノイ会談の苦い記憶がありますから、協議は合意しやすいものから「段階的に」進めることになるでしょう。寧辺にある核施設の放棄を北朝鮮が受け入れるのに応じて、米国側も制裁を緩和していく。この段階で終戦宣言と連絡事務所の相互設置は可能です。非核化の期限を設けることなく進めるものとみられます。

トランプ大統領は面会後の記者会見で「スピードよりも、正しい道を歩むことが大事」と発言していました。

武貞:そうですね。

記者会見で、トランプ大統領が金委員長をワシントンに招く件が質問されました。

武貞:こちらもハードルが低くなったでしょうね。金委員長がホワイトハウスを訪問しても全くおかしくありません。今回、トランプ大統領が先に北朝鮮に足を踏み入れたわけですから。金正恩委員長が太平洋を横断するときの手段は何になるのでしょうか。

日本はひきこもり外交”をしてしまった

韓国が果たした役割をどう評価しますか。

武貞:板門店の会場の準備をし、米朝の首脳が会う便宜を図ったのは韓国です。しかも、今回、史上初めて米朝韓の首脳会談が実現したのです。韓国内は「米朝の仲介をした」と沸いてるでしょう。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率がこれで上がるでしょう。

 それと、このようなサプライズの形で金委員長と会う計画を日本には事前通告しないで実行すれば、「日本政府はどう思うだろうか」とトランプ大統領が考えなかったことになります。これでは「日本は軽んじられた」と言われても仕方ありません。

 日本はG20大阪サミットの場で、大国としての外交を展開すべきだったと思います。

どういうことですか。

武貞:文大統領と首脳会談を行うべきだったのです。日本は今回のサミットで議長国でした。主催者として会うだけでもすべきでした。そうでなくても、日本と韓国は、北朝鮮の核・ミサイル問題と拉致問題で協力しあう関係なのですから。

 元徴用工をめぐる問題が進展していないことを理由に会わないのは正論ではあります。しかし、そのかたくなさは、かつて韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が安倍首相との首脳会談を拒んでいたのと同じようにみえました。

 もし文大統領と首脳会談をしていれば、トランプ大統領と金委員長の会談について耳打ちすることがあったかもしれません。G20大阪サミットの会場で、トランプ大統領が文大統領に対し、親指を立てて合図を送ったことが報じられました。あれは「金委員長と会う。準備をよろしく」というサインだったのかもしれません。

 日本はけっきょく引きこもり外交をしてしまったのです。北方領土の返還が難しくなった今、アジア情勢をめぐる外交の中心は北朝鮮の核と拉致の問題になります。これに参加する機会を、日本はつかまなければなりません。北朝鮮問題の当事者なのですから。