トランプ大統領(左)と習近平国家主席。2018年12月の首脳会談で握手した。今回の首脳会談では、どのような表情で対面するのか(写真:新華社/アフロ)

 20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が6月28~29日に迫った。米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談も開かれる模様だ。日本はここで両国の和解が進むよう仲介の役割を積極的に果たすべきだ。

 例えば、米国のラストベルト(さびた工業地帯)にある鉄鋼、機械などの伝統産業に日本企業が技術協力して、衰退した産業を復活させ、地域経済の活性化に貢献する。これをてこに日本や中国との貿易摩擦を沈静化するよう米国を促す、といったことが考えられる。日本企業との提携を通じて技術を身に付けた米企業が自立力を高めれば、雇用の拡大につながる。日本企業と米国企業が合弁事業などに取り組むことができれば、日本企業にも経済的利益が生まれる可能性があるので、なおよいだろう。

 経済的な利益が見込めない場合は、日本政府が費用の一部を負担してもよい。この取り組みは経済力を使った安全保障政策ととらえるべきだからだ。

 ラストベルト地域における伝統産業の復活には老朽化したインフラの整備も必要になる。そこに中国企業を巻き込んで、日中の企業が協力して、米国のインフラ再建に貢献できれば、さらに好ましい。だが、これは、米国における反中感情の強さを考えると実現が難しいかもしれない。

 仲介の役割を果たすことで、日本企業は中国からも経済的利益が得られるかもしれない。例えば中国が進める国家級のプロジェクトへの入札が認められる、新たな認可案件において日本企業が優先的に認められる、といったことが考えられる。

米中の協議再開と大きな方向感での合意が目標

 米中の関係が難しいものになった経緯を振り返ってみよう。5月に閣僚級協議が行われるまで、協議は順調に進んでいた。約150ページに及ぶ合意文書が作成される段階まで歩みを進めることができた。

 しかし、中国の劉鶴副総理がこれを持ち帰ったところ、中国共産党政治局で猛反対に遭い、文書の20~30%を修正することになった。中国のメンツをつぶしかねない項目に、保守派が反発したのだ。劉鶴副総理のような対米協調、改革推進派は少数派だ。この最終段階における中国側による修正要求に対し、米国側が激怒した。

 米国側にも非がある可能性が指摘されている。劉鶴副総理と、米国のライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表やムニューシン財務長官らが協議を進め、合意文書をまとめる直前になって、中国が「譲れない」とする原則を修正するよう要求し、中国側のメンツをつぶすような項目を米国側が挿入したのではないかとみられている。劉鶴副総理は対米協調派ではあるが、中国政府の代表だ。協議の過程で明らかにメンツをつぶされるような項目があったなら、同氏でも受け入れるはずがない。

 G20大阪サミットに合わせて開かれる米中首脳会談においても、新たな合意に至る可能性は小さいだろう。期待されている成果は、両国が5月中旬以降断絶している協議の早期再開に合意することだ。すでに劉鶴副総理やライトハイザー代表らが6月24日に、協議再開の方向で合意した模様である。首脳会談において、これにお墨付きを与えることが望まれる。加えて、中国が「譲れない 原則」とするテーマについて、米国が受け入れを「拒否」するのか「検討する」のか、大きな方向感を出してほしいところだ。

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