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 また、第2次朝鮮戦争を想定する際に、最大の敵である米国は、核兵器とICBM(大陸間弾道ミサイル)で抑止する必要がありますが、日本に対しては、日本が米軍を支援できないようにすれば十分です。その観点からも、一部の軍事専門家が言われる、雨あられが降る如くの弾道ミサイル攻撃が日本に対して行われる公算は小さいと考えます。

 しかし、飛来する弾道ミサイルの数が少なくても、最悪の場合、核弾頭を積む可能性が残る以上、これを確実に仕留める手段が必要となります。その決め手がイージス・アショアなのです。

 この配備をやめるという選択もあります。その際は、最悪の事態として東京など我が国の大都市で百万人単位の被害が出る恐れがあります。その被害を受け止める覚悟を持った上で、最悪の場合の被害をあえて容認するというのであれば、配備をしない選択はあり得るでしょう。しかし、国民を守る責任がある政府の立場としては、イージス・アショアが不要という選択はないと考えます。

 特に、費用削減という観点からの不要論はもってのほかです。自衛隊は発足以来、個々の装備についていろいろと言われてきました。例えば私が担当者のころ(中編を参照)、イージス艦1300億円、哨戒機「P-3C」と戦闘機「F-15J」がそれぞれ100億円という価格について「とんでもない」と批判されました。

 しかし、国防の重要性を考えたとき、国民の生命と財産を守る組織の装備として、我が国力の範囲で最も能力の高いものを自衛隊に配備することは当然と考えます。ここが、今回のイージス・アショアの配備を単なる価格論争にしてはならない理由です。もちろん、装備化の際の不要な出費や、削減努力なき予算計上を戒める必要があるのは言うまでもありません。

 イージス艦などを導入するときには、価格に立脚した、本質を外れた論議に陥らないよう正確に回答して国民の理解を得るために、防衛庁(当時)を挙げた大規模な研究を2回にわたり実施しました。今回、同様の努力が払われなかったことは非常に残念です。

イージス基地を守るべく対空部隊を配備することの愚

 イージス・アショアは北朝鮮の新型ミサイルなど最新の脅威に対応できないから不要だ、あるいは無駄だという性能面の議論があります。これは明らかに誤りです。

 前編でお話ししたように、イージス弾道ミサイルシステムは、①飛来するミサイルを探知するレーダー、②ミサイルを迎撃するミサイル、③両者をつなぎコントロールする武器管制システム「イージス」の3つから構成されます。ミサイル対処能力のほとんどは、③イージス武器管制システムと②ミサイルの能力に依存します。

 日本が進めるイージス・アショアシステムは③イージス武器管制システムに「ベースライン10」を採用しました。ベースライン10は、弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルなど全ての経空脅威を想定しています。よって、制御できるミサイルも、(1)弾道ミサイル対処用の「SM-3ブロック2A」に加え、(2)不規則軌道飛行ミサイルや巡航ミサイルも迎撃可能な最新鋭の艦対空ミサイル「SM-6」、および(3)巡航ミサイル対処を想定した「ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)」*など多様です。

*:艦対空ミサイル「シー・スパロウ」の後継となるミサイル

 よって、「SPY-7」レーダーがカタログ通りの性能を発揮できれば、弾道ミサイル以外の脅威にも対応できるわけです。

 真の問題は、SPY-7を選択した後、これから弾道ミサイル以外のミサイルに対応する能力である「統合防空・ミサイル防衛(Integrated Air and Missile Defense capability=IAMD)」を我が国の選択として外したことです。