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 他方、トランプ大統領は6月23日、「イランとの交渉に前提条件はない」と発言しており、交渉に前向きだ。5月に来日した際には、イランと軍事衝突したくない考えを安倍首相に伝え、仲介を望んだという。このため、トランプ大統領と意見を異にするボルトン・チームが、緊張緩和に進む同大統領と安倍首相を離間する意図で情報を流した、という見立てが考えられる。

 今後も仲介が進まず、イランをめぐる緊張が続けば、トランプ政権内の親イスラエル勢力にとって好ましい環境となる。9月に議会選挙を控えるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に有利な情勢をもたらす可能性があるからだ。イスラエルとイランの関係は険悪で、同首相はこれまでもイランに対し強硬的な姿勢を示してきた。

「日米同盟の根幹に関わるダメージ」

 専門家の中には、トランプ大統領が日米同盟の破棄を検討して、それが表に出るのは日米の信頼関係に大きなダメージだとの見方もある。明海大学の小谷哲男准教授はこうした見方をする一人だ。「個人的な会話ということなので、現実の動きがすぐにあるわけではないだろう。仮にトランプ大統領が離脱に動けば、側近が反対するに違いない」としつつ、トランプ大統領が日米同盟のあり様を理解していないことを懸念する。同氏は日本の外交、およびインド・太平洋地域の国際関係・安全保障に詳しい。

 日米同盟は、日本が基地を提供するのに対して、米国が核の傘とシーレーン防衛を提供する、というのが大きな構図だ。「非対称」ではあるが「平等」とされてきた。しかし、「トランプ大統領はこの非対称部分を不平等と認識していることになる」(小谷氏)。在日米軍基地が持つ価値を理解していないというわけだ。

 これには傍証がある。トランプ大統領は6月24日(日本時間)、「中国が輸入する石油の91%はホルムズ海峡を通過する。日本の石油の62%も同様だ。なぜ米国がこうした国々のために無償でシーレーンを守る必要があるのか」とツイートしている。

 日米関係の「こうした状況を中国や北朝鮮はどう見るだろうか」(小谷氏)

 トランプ大統領が日米同盟の破棄を本気で考えている場合、日本には今後、どのような選択肢が考えられるか。一つは憲法の改正だ。「日本は非対称性を解消すべく、平和安全法制を整え、集団的自衛権を限定行使できるようにした。現行憲法が許すギリギリのところまで来ている。いま以上に対称のものにするならば、憲法を改正する必要がある」(小谷氏)。

 このシナリオは、改憲を望む安倍首相にとって追い風となるのか。小谷氏は「現時点で改憲するのは事実上、不可能だろう。国民の意識がついてきていない。『このままでは米国に見捨てられるので、対等な関係を築けるよう改憲すべき』と国民は考えるだろうか」と見る。

 関係を対等にするのでなければ、どうするか。①可能な範囲で防衛協力を拡大、②米軍駐留経費の負担増、③貿易協議での譲歩。現実的な選択肢と考えられるのはこれらの対応、およびその組み合わせだろう。