米国で活動する中立的もしくは対中融和的な考えを持つ中国専門家の間で、バイデン政権の対中政策を懸念する声が上がっている。新型コロナ禍を克服し経済を再建するという内政の課題が外交を制約し、中国への態度を厳しいものにしている。「米国の1強覇権主義体制を守る」意識が、対中強硬姿勢に拍車をかける。最大の懸念は、台湾をめぐる歴史的経緯を軽視し、中国を刺激する行為を繰り返していることだ。中国情勢に詳しい、瀬口清之・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

2013年に会談したジョー・バイデン氏(左、当時は副大統領)と習近平国家主席 (写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

瀬口:きょうは、米国で活動する中立的もしくは対中融和的な考えを持つ中国専門家が、バイデン政権の対中政策をどう評価しているかについてお話ししようと思います。

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:丸毛透)

 米国内の反中感情が強まるにつれて、対中強硬論の研究者が目立つようになっていますが、従来の主流派であるこれらの専門家は「強硬論者の多くは中国の実情や米中関係の歴史に対する理解が不十分である」と評価しています。日本の外交・安全保障の専門家は、米国の対中強硬派と意見を同じくしている場合が多いので、異なる意見を知ることも、今後の米中関係を展望していく上で有用だと考えます。

バイデン政権が1月20日に誕生して、およそ150日が経過しました。そろそろ、バイデン政権の対中政策の全貌が評価できる時期でしょうか。

瀬口:国務省、国防総省、財務省、商務省、通商代表部など対中政策に関係する政府機関の局長級以下の重要人事がまだほとんど固まっていないので、全貌が見えるのはまだ先だと思います。しかし、バイデン政権は対中外交を活発に展開しているので、アウトラインを評価することは可能になりました。

内政重視が外交を動かし、対中強硬に

 中立的もしくは対中融和的な考えを持つ中国専門家の評価を集約すると、以下の4つのポイントが浮かび上がります。
①トランプ政権と異なり、予測可能性が高まった。
②内政重視が顕著。内政が外交を動かしている。
③「米国の1強覇権主義体制を守る」意識が強過ぎ、同盟国などとの協調を妨げる。
④中国の実力を過大評価する一方で、台湾問題のリスクを過小評価している。

①は、トランプ外交がトランプ大統領の言動に振り回されていたこととの対比ですね。

瀬口:その通りです。バイデン大統領は、政策全体の整合性や組織内部の協力体制を重視しており、各分野で経験を持つ専門家が中心となって政策を企画立案する従来型の組織外交が戻ってきました。

 ②の内政について。バイデン政権の最重要課題は新型コロナウイルスの感染拡大を押さえ込み、経済を再生することです。これが、中間選挙の結果を左右します。

 これまでを振り返ると、新しい大統領が就任して最初の中間選挙は、与党に好ましくない結果をもたらすことが多くありました。

続きを読む 2/4 「1強覇権」維持の全てについてはいけない

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