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 実射テストにも、非常な手間とコストを要します。まず、目標となる弾道ミサイルを購入する必要があります。もちろん1発や2発ではすみません。迎撃ミサイルも本物を用意しなければならない。性能データを測定し確認するための機材も借用する必要があります。ハワイ沖の広大な海域を試験場として米軍から借りる費用もかかる。これらを総合すれば、常識的には数千億円程度の出費を覚悟する必要があります。

 このリスクが具現化することを伝えるニュースが2019年3月の外電で伝えられました。SPY-7レーダーの性能確認試験設備を日本側の費用負担でハワイに設置するよう米側が要求しているとのことです。これは、レーダー選定時には想定さえしていなかった事項。日本向けの特注システムである以上、試験に関わる費用は日本が全額負担することも、米側からすれば当然でしょう。

 これらの実射試験をシミュレーションで置き換えて急場をしのぐという考えが防衛省の一部にあったと一部報道が伝えています。シミュレーションで済ます方針が現実となれば、防衛省が「レーダー選定を正当化する」という自己都合のみを優先し、実際の防衛能力を軽んじている、と言われても仕方がないでしょう。国民をも欺くものであると言わざるを得ません。実射試験をしない弾道ミサイル防衛システムが我が国防衛の役に立たないことは明白ですから。この懸念が杞憂(きゆう)であることを祈ります。

製造会社の倒産でも、米国政府の保証なし

お話をおうかがいすると、SPY-7の選択は課題が山積ですね。

香田:そうですね。でも、まだ終わりではありません。さらに、契約形態にも懸念があります。SPY-7レーダーの調達手段が「有償軍事援助(FMS=Foreign Military Sales)」ではなく、一般輸入のかたちを取ることです。

FMSは、米国政府が安全保障政策の一環として、武器輸出管理法に基づいて同盟国に装備品を有償で提供する仕組み。日本政府と米政府が契約の主体になります。

香田:米国務省の担当者が、2つの問題を大変強く心配していました。私との個人的な意見交換という位置づけで、話してくれたことです。