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イージス・アショア配備計画を停止すると明らかにした。問題はブースターの落下制御にとどまらない。カタログしか存在しない新型レーダーの導入決定は、時間を経るとともに多くの矛盾が明らかになった。予定通りの性能と期間で開発できるのか。事実上の日本向け特注システムは試験にかかかる負荷も膨大だ。海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた香田洋二氏に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

「SM-3」ミサイルを発射する米軍の艦船(写真:Smith Collection/Gado / Getty Images)

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香田洋二(こうだ・ようじ)
海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた。1949年生まれ。72年に防衛大学校を卒業し、海自に入隊。92年に米海軍大学指揮課程を修了。統合幕僚会議事務局長や佐世保地方総監などを歴任。著書に『賛成・反対を言う前の集団的自衛権入門』など(写真:大槻純一 以下同)

SPY-7がいつ納入されるのか不透明感を拭い去ることができない、というのは不安です。

香田:仮にSPY-7がきちんと開発できたとして、次の問題として、我が国のイージス・アショアシステムを構成するイージス武器管制システムや迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」との連接という、システム構成上の問題が生じます。3者が連動して、きちんと動作するのか、ということです。

 レーダー開発の常として、まずレーダーを試作し、レーダー自体の性能試験を実施します。この段取りは国を問いません。次にSPY-6を前提として開発されたイージス武器管制システムと、新たなレーダーのSPY-7との連接試験が必要になります。

レーダーの入れ替えは事実上の特注開発

 現在、導入を想定しているイージス武器管制システムは「ベースライン10」と呼ばれる最新型で、多くの異なるレーダーとの組み合わせ使用を可能としています。しかし、実際に全体システムを作り上げる際には、SPY-7に固有の信号のやり取りの細部を確認する新たな連接試験が必要となるのです。

 この作業は、プラモデルの改造のようなわけにはいきません。レーダーの変更は、膨大な開発試験のやり直しを伴う、大規模な開発作業なのです。さらに、SPY-7をレーダーに採用する今回のイージス・アショアシステムは、我が国が2セットだけを特注する新型ミサイルシステムに等しいものになります。米軍がSPY-7を導入する予定は現時点では全くありません。よって、この大規模開発作業は、防衛省・自衛隊などの関係機関にとってはもちろん、米軍やメーカーにとっても全く未知の分野になることが確実です。

 まだ先があります。この日本向け特注システムの性能確認をするための実射試験です。これに成功して初めて、SPY-7、イージス武器管制システム、SM-3ブロック2Aミサイルからなる弾道ミサイル防衛システムが、我が国の防衛において機能と性能を発揮することが保証されるのです。