
中国共産党総書記・中国国家主席である習近平(シー・ジンピン)が6月20日から21日まで平壌を訪問した。中国の最高指導者の訪朝は2005年に胡錦濤(フー・ジンタオ)が訪朝して以来、14年ぶりである。
北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)は以前から習近平に北朝鮮を訪問するよう招請していた。金正恩は1月7~10日に中国を訪問した際、8日の中朝首脳会談で習近平に北朝鮮を公式訪問するよう招請し、習近平もそれを快諾していた。後は、政治的なタイミングの問題であったのである。
労働新聞が記す、習近平が訪朝した3つの目的
習近平が訪朝した目的は、朝鮮労働党中央委員会機関紙である『労働新聞』が6月19日に掲載した習近平の署名入り文「中朝の友情を受け継ぎ、引き続き新たなページを記す」に記されている。それは3つある。
- 中朝ハイレベルでの意思疎通と交流を深めて伝統的な親善関係に新たに内容を加えること
- 中朝国民レベルで友好的な往来と様々な分野の交流と協力を拡大させること
- 中朝の対話と協力を高めて、朝鮮半島問題の解決を推進し、朝鮮半島の平和と安定を維持すること
①と②は中朝関係の問題であるが、③は米朝関係や南北朝鮮の問題が含まれている。①と②は国連安保理制裁の部分を除けば、中朝間で解決できる問題である。しかし、③は中朝間だけで解決できる問題ではない。中国が北朝鮮に協力・支持できることはするという話になるであろう。
習近平が訪朝したタイミングは、その目的に③が含まれていることを考えると、やはり6月28~29日に大阪で開催される主要20カ国・地域首脳会議( G20サミット)での米中首脳会談を視野に入れてのことであるのは間違いない。米朝間の橋渡し役を果たすことで、貿易戦争で対立が深まる米中間の緊張緩和の一助にしたいぐらいのことは考えていると思われる。
ただし、もっと大きなことも考えているであろう。朝鮮半島のみならず、東アジアの問題を解決する上で最も重要な役割を果たせるリーダーシップとしての中国の存在をG20で示したいのかもしれない。G20では日中首脳会談や中韓首脳会談も開催される。G20で中国の存在感を示す一つの材料として習近平の訪朝の成果を大いに利用することになるであろう。
金正恩と習近平の会談は、これが5回目になる。18年に3回、19年に2回である。このうち4回は金正恩が中国を訪問したのであり、習近平が中国の最高指導者として北朝鮮を訪問したのは今回が初めてである。ただし、習近平は副主席を務めていた08年6月17~19日に訪朝したことがあるので、北朝鮮訪問は初めてではない。ちなみに、この時には金正日(キム・ジョンイル)と会談しているが、金正恩と会ったという話はない。
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