戒律が禁止しても現実は…

 ちなみに、同性愛に対する激しい嫌悪は、イスラムの多数派であるスンナ派(以下、スンニ派)と少数派であるシーア派の間で共通している。今日、両派は何かと対立することが多いのだが。さらに言えば、この嫌悪はイスラムに固有のものですらない。アラビア語で「男色」を示す「リワート」は、「ルート」すなわち旧約聖書の「ロト」から派生したとされる。ここから分かるとおり、中東に起源を持つセム系一神教(ユダヤ教からキリスト教、イスラムに至る)は、すべからく反同性愛の傾向を有する。

 なお、性同一性障害については、サウジアラビアやイランなど、シャリーア(イスラム法)の影響が強い国でも、その存在を認めており、セラピーや性別適合手術を受けることを合法だとしている。しかし、これは逆に言えば、性別適合手術を受けない状態で、生まれながらの性とは異なる行動(例えば異性装=男装、女装)を取るのは違法だということになる。

 誤解を恐れず、至極単純化して言えば、イスラムでは神が人間を男性と女性に創造したと考えられており、その「間」やその「外」は認められない。今日、ムスリムが多数を占める国でもLGBTQを合法とする国はある。だが、たとえ違法ではなくとも、LGBTQではない人たちの多くがLGBTQを異常であり、病気だとみなしているのは否定できない。

 当たり前だが、このように宗教が戒律の上で同性愛を禁止したからといって、中東に同性愛者、あるいはトランスジェンダー(体の性と心の性が一致しない人)、クロスドレッサー(異性装者)がいなかったわけではない。

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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。