(写真=ロイター/アフロ)
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 米国では大統領選挙がまだ18カ月も先であるにもかかわらず、完全に選挙モードに突入した。ドナルド・トランプ大統領は6月18日、米フロリダ州オーランドで10万人の支援者を前に再選を目指すと高らかに立候補宣言。集会にはマイク・ペンス副大統領も参加し、熱気あふれる選挙戦の開始となった。

 現職大統領が再選を目指すとこんなに早く表明し、大統領選挙に突入するのは異例のこと。世界の平和にも経済にも大きな影響を及ぼすことになる。これからの18カ月、トランプ大統領の判断は、すべて、選挙戦に有利か不利かが基準となる。しかも同大統領の場合、18カ月後の大統領選挙本番ではなく、一日、一日が戦いであり、その時点でのニュースや出来事に左右され、発言や対応がコロコロ変わるからやっかいである。

 トランプ大統領を突き動かしたのは、6月に入って発表された各種世論調査だ。米FOXニュースが、民主党のジョー・バイデン氏49対トランプ大統領39で、バイデン氏が10ポイントリードという全米調査の結果を報じた。ミシガンやオハイオ、ウィスコンシンなど大統領選挙を左右する中西部主要州でもバイデン氏が2桁のリードという各種世論調査も発表された。

 選挙戦がスタートしたこの時点で、民主党の候補者が23人と乱立したため、民主党への関心が高まっている。その中で先頭を走るバイデン氏に有利な結果が出るのは当然だが、トランプ大統領は面白くない。

 加えて、トランプ陣営が行った世論調査でも厳しい結果が出ているとの情報がすっぱ抜かれた。トランプ大統領は自身で、「フェイクニュースだ」とツイートしている。

トランプ大統領が気にするのは「経済」

 トランプ大統領の再選があるのかどうか、過去の大統領選挙結果に照らし、さまざまな予測がなされているが、2つの相矛盾する状況がある。トランプ大統領に不利なデータは、支持率が常に45%以下であり、不支持率が上回っていること。その一方で、トランプ大統領に有利なのは経済が好調であること。このどちらが選挙戦を左右するのか。トランプ大統領にとっての命綱が好調な経済であることは間違いない。

 5月5日の日曜日、トランプ大統領が「対中輸入に対する関税を引き上げるぞ」とツイートした時は、「バイデンは中国に甘い。そうだ、中国に厳しく当たろう。それが選挙戦に有利だ」と瞬間的に判断したのだろう。

 ところが、中国はその後、関税が引き上げられても一向に譲歩の姿勢を示さない。経済専門家からは米国景気が後退するとの予測が相次いで出され、「これはまずい」と思い始めた。そこで、トランプ大統領の側からG20サミットの際に習近平国家主席と会う用意がある、会わなければ、3000億ドル分の輸入に対する関税をさらに引き上げることになる、と口にし始めた。それでも中国は反応せず、ついにトランプ大統領は「ファーウェイも一緒にディールしてもよいのだ」とまで言いだした。この時点でのトランプ大統領は明らかに、「中国に厳しく当たる」モードから、経済の減速を心配するモードにシフトしている。

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