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安倍首相が6月12~14日にイランを訪問し、同国の首脳と会談した。「訪問は成果が上げられなかった」との見方がある一方で、日本エネルギー経済研究所の坂梨祥氏は、ハメネイ師が安倍首相に「あなたとは話をしよう」と語った点を高く評価する。その理由はなぜか。今後、どのような展開があり得るのか。

(聞き手 森 永輔)

米国による制裁再開を非難するイランの最高指導者、ハメネイ師(写真:Abaca/アフロ)

安倍晋三首相が6月12~14日 にイランを訪問し、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師およびハッサン・ロウハニ大統領と会談しました。同国と米国との緊張を緩和するのが目的でした。米国は、イランと米英独仏ロ中国が締結した核合意から離脱し、イランに「最大限の圧力」をかけ続けています。坂梨さんは、このイラン訪問をどう評価しますか。

坂梨:安倍首相を批判する向きもあります。ハメネイ師が安倍首相に対し「トランプ氏は意見交換するにふさわしい相手ではない」と語り、米国との対話を拒否したのを重視してのことです。ですが、私は成果があったと評価しています。

坂梨祥(さかなし・さち)
日本エネルギー経済研究所 中東研究センター センター長代行
1997年、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士号取得。99年、英国ダーラム大学中東イスラム研究センター修士号取得。2005年、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程単位取得退学。05年に日本エネルギー経済研究所入所し、中東研究センターの研究員を務める。17年から現職。この間、Gulf Research Center客員研究員や在イラン日本大使館専門調査員を歴任(写真:新関雅士、以下同)

 第1は、日本とイランとの2国間関係において。日本の首相が41年ぶりにイランを訪問。そしてイランの最高指導者と初めて会談しました。1983年に安倍首相の父である晋太郎氏が、ハメネイ師と会談していますが、同師は当時大統領でした。

 第2は、米国とイランとの緊張を緩和するという役割において。あまり報じられていませんが、ハメネイ師は安倍首相との会談の冒頭で、「あなたとは話しましょう」と語っているのです。これは「安倍首相を仲介とする間接的な対話に応じる」ことを意味していると思います。

 ハメネイ師はかねて「米国とは交渉しない」という意向を明らかにしていました。なので、直接対話を拒否したのは新しいことではありません。また、一国の最高指導者を30年にわたって務めてきた人物の信念を、1回会っただけで変えられるものではありません。それよりも、間接対話を否定しなかったこと、仲介者として安倍首相を認めたことが重要です。「初めの一歩」として価値があると考えます。緊張を緩和するには対話をしないとどうにもならないのですから。