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原油価格は1バレル=52ドル前後にとどまっています。

坂梨:そうですね。しかし、米国は最大限の圧力を加え続けています。緊張が続く中で、米国とイランのどちらかが相手のメッセージを読み違える危険が絶えずあります。原油の禁輸措置はイラン経済を窒息させかねません。もがくイランが予測できない火種をまくことになるかもしれないのです。

 そうならないよう、読み違えをさせない仲介としての役割が重要です。

米国の懸念を解くすべを考える

今後、日本には何ができるでしょう。

坂梨:まずはイラン経済を窒息させないようにすること。例えば、「戦争を回避するには、イランの原油輸出を一定程度認めることが必要だ」と米国に訴えることも考えられます。

 その一方で、米国と、中東における米国の同盟国が懸念する点のいくつかを検討するようイランに求めることも考えられます。具体的には、米国がイランに求めている12項目の要求のいくつかが対象になるでしょう。イランがこれらすべてを突っぱねても、たちゆくものではありません。もちろん、イランが核合意を順守していることに理解を示しつつです。

例えば、弾道ミサイル開発、中東で活動する親イラン武装勢力への支援などですね。

坂梨:そうです。「米国のためにスパイ活動をしていた」として拘束していた人物を1人、イランはすでに解放しました。イランは何もしていないわけでもありません。

6月末に予定されている20カ国・地域首脳会議(G20サミット)や、9月の国連総会が、次のステージとして注目されています。

坂梨:G20サミットであれ、国連総会であれ、ハメネイ師とトランプ大統領の直接会談の実現は困難でしょう。

 しかし、G20サミットは日本が議長国です。イランの立場を説明する場を設けることはできるでしょう。イラン核合意を維持すべく、「核不拡散体制」を議題に据えることも考えられます。イラン核合意がその要の1つとされる「核不拡散体制」維持のために何ができるかを議論する。米国がすでに離脱した「イラン核合意」を直接取り上げるというよりも、「核の不拡散」の問題として取り上げることはできると思います。

最後に、日本企業が運航するタンカーが攻撃された件について伺います。攻撃を実行したのは誰か、どう見ますか。大きく2つの見方があります。1つはイランもしくはその傘下にある組織。もう1つは、安倍首相による緊張緩和を望まない勢力。

坂梨:現時点で断定することはできません。いずれの見方にも一理あると思います。米国が最大限の圧力を加え続ける中、イランにつながる組織が、反撃力があることを示そうとした。ホルムズ海峡が危険な海域になれば世界中が困ることをアピールした、と見ることもできます。

 安倍首相による緊張緩和を望まないのは、今の緊張を維持し、イランを封じ込め、その弱体化を図りたい勢力ですね。サウジアラビアやアラブ首長国連邦、イスラエルなど反イランの国々、もしくはこれらにつながる組織が、イランがやったと偽装する可能性もあるでしょう。

米国が偽装した可能性も考えられますか。ベトナム戦争のときのトンキン湾の一件が思い出されました。

坂梨:トランプ大統領は戦争を欲していないと明言しています。ただ、反イランの強硬派である、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は軍事的な紛争を望んでいる可能性はあります。ですので米国が関係している可能性も排除できませんが、その目的はあくまでもイランを最大限追い詰めて弱体化させることなのだと思います。

■変更履歴
掲載当初、4ページ目に「拘束していた米国籍を持つ人物」とありました。 「『米国のためにスパイ活動をしていた』として拘束していた人物」の誤りです。お詫びして訂正します。 [2019/6/19 8:40]

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