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安倍首相のイラン訪問に世界が注目

安倍首相とイランの両首脳との会談を評価するに当たって、3つの視点があると思います。一つは、イランが何を望んでいて、それを会談で満足させることができたのか。2つめは、米国が何を望んでいて、それを会談で満足させることができたのか。第3は、日本の国益に貢献することができたのか。それぞれの点をどう分析しますか。

坂梨:イランが望んでいたのは、①イランの立場を世界に理解してもらうこと、そして②米国が科す制裁を緩和して原油を輸出できるようにすること、金融決済システムに復帰できるようにすること、です。

 イランの視点に立てば、米国との間で緊張が高まったのは、米国がイラン核合意から一方的に離脱したのが発端です。加えて、同合意にのっとってイランとの経済関係を正常化しようとする者を2次制裁で脅している。他方、イランが同合意を順守していることは、つい最近もIAEA(国際原子力機関)が認めています。この不釣り合いな現状を世界に知らしめたい。

 ②で挙げた、原油の禁輸と金融決済システムからの締め出しは、米国が単独で科す、国連決議を伴わない制裁です。これらを無効化し、イランだけが核合意を順守している状況を変える仕組みを60日以内、つまり7月6日までに考え出してほしい、と関係国に訴えているのです。

ロウハニ大統領は、6月12~14日に開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議に出席し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平国家主席と会談しました。安倍首相を仲介としなくても、イランの現状を世界に広めることができるのではないでしょうか。

坂梨:SCO首脳会議と安倍首相との会談では、世界の注目度が全く異なります。安倍首相との会談には、世界中のメディアが注目しました。

世界はなぜ安倍首相にそこまで注目したのでしょう。日本人が認識する以上に日本はグローバルプレーヤーなのでしょうか。安倍首相が、米国が昨年、核合意から離脱して以来、西側諸国首脳として初めてハメネイ師に会ったことを強調する報道があります。それとも、安倍首相とトランプ大統領が個人的に良い関係を築いているから。

坂梨:日本がグローバルプレーヤーかどうかはさておき、西側諸国の首脳としてハメネイ師と会った人物は少ないという指摘がありますが、実はそうでもありません。イタリアのマッテオ・レンツィ首相も16年に会談しています。

 いちばん大きいのは安倍首相がトランプ大統領の信頼を得ていることでしょう。同大統領は安倍首相に思いを託したと言われています*。加えて、日本が初めて中東の緊張緩和のために動いた点も大きいでしょう。このとき、単なる米国のメッセンジャーとしてではなく、原油の供給の大半を中東に頼り、この地域の安定を死活的問題として抱える日本の首相として振る舞ったことが重要です。

*:トランプ大統領は電話会談で安倍首相に「これ(編集注:イラン訪問)はシンゾウにしかできない。信頼している」と伝えた、とされている

トランプ氏の望みは、再選をにらんだアピール材料

米国側は何を望んでいたのでしょう。

坂梨:トランプ大統領は、2020年に予定される大統領選挙の前に、イランに最大限の圧力をかけたことの成果を国民にアピールしたいでしょう。同大統領はディールメーカーを自任しているものの、核合意離脱から1年たっても、成果を上げることができていません。