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 これらを背景に、香港を「より中国的に」統治すべきだという声が中国指導部の中で強まったとしても不思議ではない。とりわけ、「中国モデル」に従い中国国内の管理と統制を強めているときに、香港にだけ自由気ままを許したのでは示しがつかないだろう。2012年以来、そういう方向で香港の管理強化が意図されてきたことは恐らく間違いない。

 従って、香港の人たちが「北京は香港の『中国化』を進めている」と強く感じ、それに反発し抵抗しているという見方は正しい。中国大陸への経済的な依存が高まり、中国の影響力が増す中で、香港の生きざま(Way of Life)を守りたいということだ。それは欧米のいう「民主化」とは必ずしも一致しない。英国の植民地であった時代に香港が真の民主主義を経験したことは一度もなかった。

国際社会の注目が改正を延期させた

 中国が台頭し、自分たちのやり方に対する自信を増大させたことが、米国を中心とする欧米社会において中国異質論を生み出し、中国を現行国際システムに対する「修正主義者」と断じさせた。米国では、今、中国をたたいておかないと米国の民主主義自体が壊されるという恐怖心が芽生えているという。これまでのように、中国はいずれ自分たちと似たような国になるのだから、中国が嫌がることはあまり言わずにいてあげようという雰囲気は欧米から消えた。自由や人権という、民主主義の核心的価値を求めるべく、再度声を上げるべきだという雰囲気になってきている。なんだか天安門事件の頃の雰囲気に似てきた。

 今回、香港政府が逃亡犯条例改正の延期を決めたのは、混乱を収拾し事態を沈静化するためだろう。同時に6月28日から始まる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を強く意識した対応だ。天安門事件のときのような人権をめぐる対立の構図を、世界との関係で作りたくないのだとみられる。

 米中対立の激化は、中国国内で路線の違いを表出させ、もう少しソフトな対応を求める声が強まっている。香港問題についても同じ力学が作用する。力で押さえつけ管理を強めるだけでは物事はうまくいかないと思っている人も少なくないのだ。逃亡犯条例改正問題は、中国と世界との関係がどのように収れんしていくのかという問題と切り離せない関係にあるのだ。