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日独は、ともに新型コロナウイルスによる死者数を他国に比べて低く抑えることに成功したが、両国の戦略の間には大きな違いがあった。その1つが検査戦略である。ドイツは世界で最も早く検査体制を拡充することにより、死亡率を西欧主要国の間で最低の水準に抑えた。我が国はこれまでのところ少ない検査数でもウイルス拡大の抑え込みに成功しているが、第2波の到来やウイルスの変異に備えて、検査体制の拡充も検討する必要があるのではないか。

ドイツはPCR検査の体制を早期に立ち上げ、「欧州におけるコロナ対策の模範国」と呼ばれる(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 日本政府は5月25日に、東京などの大都市についても新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を解除した。厚生労働省によると5月30日時点の日本の感染者数は1万6804人、死者数は886人。欧米諸国に比べると驚くほど低い数字だ。

 日本の10万人当たりの死者数は0.7人で、英国(57.52人)、イタリア(54.99人)、フランス(42.87人)、米国(31.42人)などに比べて、大幅に少ない。

 欧米のメディアは、日本は「大量のPCR検査や罰則付きの外出禁止など、他の大半の国々で標準になっている方法を使わずに、ウイルスの抑え込みに成功した」と驚嘆の声を上げている。

 筆者が住むドイツは、欧州の中では死者数を比較的低く抑えることに成功した。10万人当たりの死者数は10.25人で、英国より82%、イタリアより81%、フランスより76%少ない。

 感染者死亡率についてもドイツは10.25%で、ベルギー(16.2%)、フランス(15.4%)、イタリア(14.3%)、英国(14.0%)などよりも低くなっている。

 このためドイツは「欧州におけるコロナ対策の模範国」と呼ばれている。

ドイツは欧州における模範国
●主要国の累計死者数(万人、5月31日現在)
出所:ジョンズホプキンス大学

 英国オックスフォード大学のジェレミー・ファラー元教授は、独日刊紙が5月15日に掲載したインタビューの中で、「ドイツ政府は1月に最初の感染者が見つかってから迅速に対応し、検査数を増加させた。英国政府は対応が大幅に遅れ、最初の貴重な6週間を無為に過ごすという過ちを犯した。我々英国人は、ドイツのこれまでの成功に学ばなければならない」と述べている。

 同教授は世界で最も優秀な疫学者の1人に数えられる人物で、鳥インフルエンザや豚インフルエンザなどを研究してきた。同国のウエルカム・トラストという公益信託団体の代表も務める。1936年に創立されたこの団体は医学の基礎研究を目的としており、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団に次ぐ世界第2位の資金量を誇る。

 同教授は「ドイツは多くの人の生命を救った。ドイツ人は、これまでの成果を誇りに思ってよい」と語る。

 日本とドイツはともにパンデミック第1期の死者数を比較的低く抑えることに成功した。だが、その方法論は大きく異なった。最も違いが大きいのが、ウイルス検査についての戦略である。