ドイツにとって中国は最重要の貿易相手国である。だがドイツでは、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、政経分離主義を改め対中依存度を減らすべきだという意見が強まっている。経済界は難しい判断を迫られる。

中国とEUが投資協定をめぐり大筋合意したのも今は昔。EUの盟主ドイツは中国との距離をどのように取るのか(写真:新華社/アフロ)
中国とEUが投資協定をめぐり大筋合意したのも今は昔。EUの盟主ドイツは中国との距離をどのように取るのか(写真:新華社/アフロ)

 ドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)の上海特派員、ヘンドリク・アンケンブランド記者は、3月11日の紙面に「チャイナ・リスク」と題する記事を載せた。同氏は、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に対する懸念がEU(欧州連合)で高まっていると指摘する。習近平国家主席が、ロシアによるウクライナ侵攻についてウラジーミル・プーチン大統領を批判せず、逆にEUの対ロシア経済制裁措置を批判したからだ。

「中国からも撤退すべきだ」

 アンケンブランド記者は、あるEU関係者の言葉を引用した。「欧州はいま第3次世界大戦の瀬戸際に立っている。もし中国がロシアを積極的に支持したら、EUと中国との経済関係にとって大打撃となる。ロシアからだけでなく、中国からも撤退すべきだと求める声が欧州で強まるだろう」

 習近平国家主席は、2月26日に「ウクライナにおけるロシアの権益は正当だ。プーチン大統領は、私の最良の友人だ」と述べ、ロシアの立場に理解を示した。王毅(ワン・イー)国務委員兼外務大臣も2月27日に「国際法上の根拠を欠く一方的な経済制裁措置に反対する。制裁措置は問題の解決につながらない」と主張し、EUの経済制裁措置を批判した。

 さらに中国は2月26日、ロシアのウクライナ侵攻を非難する国連安全保障理事会決議の採決において棄権し、ロシア非難を避けた。

 ドイツは約20年間にわたりロシアの国際法違反や人権抑圧について声高に批判することなく、政経分離主義を貫いて貿易を拡大してきた。その結果2021年、輸入する天然ガスにおけるロシア産の比率が約55%にまで高まった。ドイツが液化天然ガスの陸揚げ港を完成させて、ロシア産ガスの輸入を止めることができるのは2024年の夏。それまで、プーチン大統領はいつでもドイツへのガス供給を停止して、同国の製造業界に甚大な打撃を与えることができる。ドイツのifo経済研究所は、「ロシアのガス供給が止まった場合、ドイツに生じる経済損害は2022~2023の2年間で2200億ユーロ(約30兆円)に達する」と予測している。

 ドイツの国の論壇では「対ロシア政策の失敗を教訓として、中国に対する高い依存度も改めるべきではないか」との指摘が目立ち始めた。中国はロシアと同じく、欧米型の議会制民主主義や三権分立を導入していない。言論・信教・集会などの自由を抑圧し、軍事力を重視する強権国家だ。しかもロシア軍との軍事演習に参加したり、ロシア産ガスの購入契約を結んだりするなど、両国は近年結びつきを強めている。

 しかも、ドイツ経済にとって中国の重要性は、ロシアとは比べものにならないほど大きい。ドイツと中国の2021年の貿易額(輸入額と輸出額の合計)は2450億ユーロで、ロシアとの貿易額(600億ユーロ)の4倍を超える。中国は6年連続で、ドイツにとって最も重要な貿易相手国の地位を占めた。

次ページ フォルクスワーゲンの著しい中国偏重