トランプ米大統領が5月25~28日、国賓として日本に滞在した。藤崎一郎・元駐米大使は、日米首脳会談の場で「すり合わせ」をしたことで、安倍首相と金正恩委員長との会談や安倍首相のイラン訪問が成果を生み出しやすくなったと指摘する。

(聞き手 森 永輔)

安倍首相が並び立つことでトランプ大統領の信頼性が増した、と藤崎氏は見る(写真:ロイター/アフロ)

米国のドナルド・トランプ大統領が、安倍晋三首相との首脳会談を終え帰国しました。今回の首脳会談はどのような視点から評価すべきでしょう。4月、5月、6月と3カ月連続で行われるシリーズとしての首脳会談の第2回目として評価すべきなのか。それとも、今回は今回として単独で評価すべきなのか。

藤崎:今回は今回で評価すべきでしょう。そしてポイントは、令和最初の国賓としてトランプ大統領が訪日したことです。

藤崎一郎(ふじさき・いちろう)
元駐米大使、中曽根平和研究所理事長
1947年生まれ。1969年外務省に入省。駐米公使、北米局長、外務審議官、駐ジュネーブ国際機関代表部大使(国連・WTO)などを経て、2008年に駐米大使。2018年から現職。(写真:加藤 康)

 トランプ大統領が国賓として来日することで、天皇・皇后両陛下も皇室外交にデビューしました。私も宮中晩さん会に出席し、お二人がトランプ夫妻とにこやかに談笑される姿を見ることができました。お二人とも英語がお上手なので、通訳を介することなく実にお楽しそうにお話しされていました。最大の友好国である米国の大統領夫妻と素晴らしいデビューを飾られたことは喜ばしいことです。

 またトランプ大統領は日本の国民と触れ合う機会も設けました。拉致被害者家族との対面、経済界の面々との会合です。大相撲観戦は千秋楽に当たっており良い演出だったと思います。

“世界に不安感を与える”米国を日本が支える

 今回の訪日は米国にとっても大きな価値があったと思います。トランプ大統領は発言の方向性が一定せず、海外から心配の目で見られている面があります。適切な立場を崩さない、首脳として長い経験を持つ安倍首相がトランプ大統領とともに立つことで世界に安心感を与えたのではないでしょうか。安倍首相はトランプ大統領の発言に迎合することなく、イランとの核合意は維持すべきだと言い続けています。WTO(世界貿易機関)を中心とするリベラルな貿易体制も重視している。首相としての在任はおよそ6年に及びます。

 欧州のメディアは、安倍首相の振る舞いを「すり寄り」と皮肉を込めて評価しています。私は、これはやっかみだと思います。日本が軽視されると「パッシング」と言い、接近すると「すり寄り」と言う。気にする必要はまったくありません。

日米首脳会談で共同声明を出さなかったことに注目する向きがあります。

藤崎:昨年9月の首脳会談で貿易協議の大枠が決まっています。今回、共同声明を出したとしても、「交渉を加速させる」などありきたりなものにとどまったでしょう。共同声明を出さなかったことを問題視する必要はないと思います。

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