バイデン政権が発足して以降の米中関係に関する報道を見ると、新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立ばかりが目立ちます。このため経済面においても、欧米企業や消費者が中国離れの方向に動いているのではないかと推測されていると思います。しかし、先のお話しした実体経済交流の視点から見れば、米中、日中、そして欧中の経済関係が、すべて外交関係と同じ方向に動いているわけではありません。残念ながら、こうした事実は日米欧各国において報道されることが稀(まれ)。ほとんど知られていない状況です。

チャレンジの時を迎える日本企業

 こうした中で、日本企業はチャンスを迎えています。

 まず、中国のビジネス環境はどんどん進化しており、今後一層の発展が期待できます。その規模(GDP)は、2010年に日本を抜き、現在はおよそ3倍に達しました。今後も、対外開放路線に変更はありません。今年2021年を開始年とする第14次5カ年計画の柱に「双循環」を据えました。新型コロナ禍が収束するまでの間、当面は国内の需要拡大に重点を置き、経済を国内主導で循環させる。長期的には引き続き対外開放路線に基づいて国外との連携を促進し、内外経済の相互補完による安定的な経済発展を実現する、というコンセプトです。

 新型コロナ禍でもビジネスを滞らせない社会インフラも普及しています。Eコマースやスマホを使ったQRコード決済など、非接触で取引を完了する仕組みが、全国どこでも利用できます。このため、多くの中国人は現金もクレジットカード類も持っていません。スマホ一つで十分だからです。これらの面で、日本は大きく後れを取っています。

 消費の質も高まっており、日本製品を受け入れる下地が整いました。2017年10月に開催した第19回党大会で、従来の経済成長重視路線を転換し、量の拡大より質の向上を重視した経済社会の発展を目指すことを新たな国家目標に掲げました。

 1990年以降に生まれた「90后(ジュウリンホウ)」世代が消費の柱を成すようになってきたことが、消費の質の向上をけん引します。彼らが好む消費の傾向は、その上の世代とは大きく異なります。抗日戦争へのこだわりは薄く、日本製品を購入するのに抵抗がありません。大卒の比率も高く、そのマナーもスマートです。ちなみに中国の大学卒業者数は1990年にはわずか61万人でしたが、2020年には967万人ともうすぐ1000万人に手が届くところまで増えました。大学進学率も50%を超えて日本(54%)と同じくらいの水準になっていると考えられます。

 中国社会の中での彼らの位置づけは、ちょうど1980年代に大学時代や社会人の初期を過ごした日本人と同じです。ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代ですね。「90后」世代も、中国の中で初めて貧しさを経験することなく、欲しいものは何でも手に入れられる環境で育ちました。少しだけ上の世代の人たちまでが共有していた日米欧先進国に対するコンプレックスもありません。

 さらに、中国市場は日本企業とその製品を歓迎しています。これは自動車販売の実績に象徴的に表れています。日本車のシェアは2017年の17%から2020年の24%に増加しました。足元ではさらに増える傾向にあります。このほか、工作機械やモーターなどの部品、環境関連、ヘルスケア関連、消費財関連の日本企業が、中国ビジネスで好調を続けている。

 中国の地方政府は「日本産業園」という日本企業向けの経済開発区のようなものを設け、その誘致拡大に取り組んでいます。中国市場に最も早く参入したのは日本ですし、中国各地で長期にわたって雇用確保、税収拡大、技術進歩に大きく貢献してきた実績があるからです。

 中国企業が、日本企業と手を組む動きも目につき始めました。典型例は、トヨタ自動車と中国・比亜迪(BYD)による合弁会社の立ち上げ。2020年5月から、電気自動車(EV)関連部品の設計や開発で協力を開始しました。

 中国でのビジネスを進めるにあたって、もはや日本企業の技術力だけでは十分ではありません。その一方で、中国企業も高い技術力を身につけてきました。マーケティングを考えれば、中国企業に地の利があります。なので、高い技術力と柔軟な発想を持つ中国企業と日本企業が協力する事例が拡大する傾向にあります。中でも有望なのは、中国のスタートアップ企業との協力です。

中国市場の真偽を自らの力で確かめる

 こうしたチャンスを日本企業は生かすことができるでしょうか。

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