
世界の株式市場は3月の安値から大きく回復しました。この上昇について、①各国が経済活動の再開に向け行動規制を緩和する中で大きな問題が生じていないこと、②治療薬やワクチンの開発が進み新型コロナウイルスへの恐怖が薄らいだこと、などが理由として挙げられます。コロナ相場の第1幕は新型コロナの恐怖との戦いだったので、これで第1幕は終了。ここからは第2幕となります。
第2幕のポイントは企業の破綻
第2幕は新型コロナにより引き起こされた景気の停滞や企業業績の悪化がテーマです。その中で筆者が注目しているのが企業の破綻です。既に多くの企業が景気の悪化により苦境に立たされています。今年に入って米国では百貨店のニーマン・マーカスが米連邦破産法11条を申請。同じく百貨店のJCペニーも後を追いました。日本ではアパレルのレナウンが民事再生法の手続き開始を決定しています。
航空業界は新型コロナの打撃が特に大きかった業種の一つです。そのため政府の保護を求める事例が見られます。米国の大手3社は支援を受けており、イタリアのアリタリアは6月までに完全国有化されると報じられています。このように企業の破綻は始まっています。
懸念される信用リスクの高まり
ここで懸念されるのは信用リスクの高まりです。低金利が長期に続いているため、従来であれば存続できなかった企業が多数存続しているといわれています。国際通貨基金(IMF)によれば低格付け債など世界の高リスク資産が9兆ドルに達したとのことです。これは、リーマン・ショック後の10年で倍増した計算になります。新型コロナ危機をきっかけにこうした資産の価格が大きく下落するようなことがあれば新たな金融危機につながることも考えられます。このリスクには注意が必要です。
警戒すべき3つの分野
このリスクが実現するきっかけになり得る分野として筆者が注目している分野が3つあります。ユニコーン、REIT(不動産投資信託)、石油です。
ユニコーンは神話に出てくる伝説上の生き物「一角獣」のこと。金融市場では最近、急成長した未上場企業のことを指してユニコーンと呼んでいます。明確な定義はないものの、一般には①未上場、②企業価値10億ドル以上、③創立10年以内の企業をユニコーンと呼ぶことが多いようです。ユニコーンは低金利の環境を生かし資金を集め成長してきました。しかし新型コロナで本業が打撃を受けるとともに、資金調達が難しくなり困難に陥っているユニコーンも少なくないようです。4月27日付け日本経済新聞はユニコーン筆頭格の民泊大手エアビーアンドビーが契約従業員を解雇するとともに、幹部の報酬を減らしたと伝えています。
ソフトバンクグループはシェアオフィス大手のウィーワークなど多くのユニコーンに出資しています。このため新型コロナによって打撃を受け、資金繰りのための資産売却に追い込まれています。このソフトバンクのような事例が続けば、ユニコーン全体について資産価値の見直しが余儀なくされる事態も考えられます。これが、ユニコーンが信用リスク上昇のきっかけになり得ると考える理由です。
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