5月23~26日に行われた欧州議会選挙は、欧州分裂の深刻さを改めて浮き彫りにした。保守・社会民主の中道勢力の会派が大きく後退し、初めて過半数を失った。地球温暖化問題への関心の高まりを背景に環境政党の会派が躍進する一方、自由市場経済を重視する会派や、右派ポピュリスト会派も議席数を増やした。中道勢力が環境保護勢力などと連立しなくては過半数を確保できなくなったことで、EU(欧州連合)の政局運営はこれまでよりも一層複雑化することになる。

マクロン大統領率いる「共和国前進」を抑えてフランスで首位に立った「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン党首(写真:AFP/アフロ)

 今回の欧州議会選挙は、親EU派と反EU派勢力が対決する「欧州の未来を占う選挙」「EUに関する国民投票」と呼ばれ、市民の関心が非常に高かった。投票率は前回(2014年=42.6%)に比べて8.3ポイントも増えて約51%となった。これは過去20年間で最高の投票率だ。その開票結果(予測)は、欧州の約4億人が大きく分裂している構図を改めて示した。 

 中道勢力の後退は、選挙前の予測を大きく上回った。欧州議会が5月27日未明に発表した開票結果(予測)によると、キリスト教精神に基づく保守中道会派「欧州人民党(EPP)」と社会民主勢力である「欧州社会・進歩同盟(S&D)」は70を超える議席を失って後退。両会派の議席合計は401から325に減って、過半数(376議席)を失った。

 最も議席配分数が多いドイツでは、EPPに属するキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の得票率が前回の選挙に比べて7.4ポイント減り22.6%となった。これは全国規模の選挙において同党が記録した得票率としては過去最低。S&Dに属する社会民主党(SPD)は前回に比べて得票率を11.5ポイントも減らした。

環境問題が欧州の政局を大きく左右する時代に

 これに対して、ドイツの緑の党など各国の環境保護政党が構成する欧州緑グループ「欧州自由連盟(G/EFA)」は、議席数を52から69議席に増やす目覚ましい躍進を示した。ドイツでは緑の党の得票率が前回の10.7%からほぼ2倍の20.5%に増え、メディアや世論調査機関を驚かせた。同国の40歳未満の有権者の間では、緑の党への人気が最も高かった。

 その理由は、地球温暖化問題が欧州議会選挙の重要な争点の一つだったからだ。欧州では平均気温が年々上昇し、農作物への被害や突風や集中豪雨による損害が増えている。スウェーデンの16歳の活動家グレタ・トゥンベリさんが気候変動に抗議するため独りで始めたストライキ「未来のための金曜日(フライデー・フォー・ザ・フューチャー)」は今年1月以降欧州全体に広がり、5月24日にも数十万人の生徒たちが授業をボイコットしてデモに参加した。

 ドイツでCDU・CSUとSPDが大きく票を減らした一因は、投票日の1週間前に、レゾが「CDUの破壊」というビデオをネット上に公開したことだ。レゾは、ドイツの若者の間で人気が高い26歳のユーチューバーである。レゾは「CDUなどの既成政党は、気候変動に歯止めをかけるための対策を真剣に行っていない。右翼政党『ドイツのための選択肢(AfD)』は二酸化炭素が地球温暖化につながっていることすら否定している。これらの党を選ぶな」と呼びかけた。

 55分間のビデオは1週間で約1000万人が視聴し、新聞やテレビを上回るネットの影響力を強く印象付けた。ビデオは左派的な視点から環境問題、武器輸出、米軍に対するドイツの支援など硬派の内容を扱っている。レゾの背後に政党関係者がいるのかどうかは明らかになっていない。

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