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勝利宣言をするモディ首相(写真:AFP/アフロ)

 2019年5月23日に開票されたインド下院の選挙で、ナレンドラ・モディ氏とその与党・インド人民党(BJP)は、1960年代に首相を務めたジャワハルラル・ネルー以来の多数の議席を獲得し、再び実力を示す機会を与えられた。モディ氏は国家安全保障とヒンドゥー・ナショナリズムをスローガンに選挙を戦い、インドの有権者は国家安全保障を重視して投票した。日本や米国など世界各国の政府は、モディ氏とモディ政権が2014年の選挙の際に約束したもののうち、まだ実現していない経済政策および外交政策を、今後、実行に移すことを想定して行動することになるだろう。

アパルナ・パンデ(Aparna Pande)
ハドソン研究所南アジア・プログラムディレクター

米ボストン大学で博士号を取得した後、現職。専門は米印関係、インド。米ハドソン研究所においてインドに関するプロジェクトのリーダーを務める。米印両政府間の外交政策を主導する研究者の一人。アメリカン・インタレスト誌、ヒンドゥスタン・タイムズ、ライブミント、ハフィントンポスト、サンデーガーディアン、リアル・クリア・ワールドなど多くのメディアに出演・執筆中。主な著書に『From Chanakya to Modi: Evolution of India's Foreign Policy』がある。

 世界最大の民主主義国であるインドの選挙は観察する価値のある壮大なものだ。インドは29の州と7つの連邦直轄領からなり、すべての地域が選挙に参加する。12億人を超える人口のうち9億人が有権者であり、6億人近い有権者が投票した。選挙期間は4~5月まで6週間に及んだ。

 インドの選挙は(英国の)ウェストミンスター式の議会制度を採用しており、2院制である。下院にあたるロック・サバハ(Lok Sabha)は5年ごとに選挙を行う。下院は543議席で構成されており、BJPは今回300議席超を獲得した。連立を組む他の政党も含めた与党連合・国民民主同盟(NDA)全体では350議席を上回る。前回2014年の選挙に比べて与党は議席を伸ばした。前回選挙での獲得議席はBJPが約280、NDA全体で約330議席だった。

2月のテロに空爆で報復

 BJPがこのような圧倒的勝利を収めた理由は多岐にわたる。最も重要なのは、今回の選挙において国家安全保障が大きな役割を果たしたことだ。2019年2月にカシミール・インド管理地域でのテロ攻撃を受けた後、モディ氏はパキスタン国内にあるテロ組織のキャンプを空爆。インドの言葉でいう「チョウキダー(Chowkidar)」、つまり「インドで最も優れた守護者」とのイメージを獲得した。インドの有権者は経済よりも国家安全保障を重視し、モディ首相に寄せる信頼を投票の形で再確認した。