より政治的な「Sputnik 日本」、その3種類の記事とは

 RUSSIA BEYONDに比べて、Sputnik 日本はより明白な懸念を感じさせる。Sputnik 日本が発信する情報は、政治的な内容を多く含んでいるからだ。その内容は、ロシア政府に対する抗議や反体制派指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏の暗殺未遂などロシア内政に関するものではなく、他の国、特に欧米の国々で生じている問題とスキャンダルに関するものである。

 Sputnik 日本は非常に活発なサイトで、毎日多くの新しい記事を掲載している。これらの記事は大きく3つのカテゴリーに分類できる。

 第1のカテゴリーは、「ショーウインドーの飾り付け」となるもの。このカテゴリーの記事は、ロイター通信や共同通信など信頼できるソースからの情報を使用しており、政治的な偏りはない。例えば、2021年4月16日に掲載した「ブラジルで新たに7万3000人がコロナに感染、死者は3500人増」というタイトルの記事である。このような客観的な記事の役割は、「Sputnik 日本は信頼できるメディアである」という印象を読者に与え、安心させることにある。

 第2のカテゴリーの記事は、ロシアの文化と社会に好意的なイメージを抱かせることを目的としている。これらは、RUSSIA BEYONDが発信する記事に似ている。Sputnik 日本の場合は、フィギュアスケートに関する記事が多い。これは、Sputnik 日本を管理するロシア当局が、エフゲニー・プルシェンコやアリーナ・ザギトワなどロシアのフィギュアスケーターが日本の若者の間で人気を博していることを知っているからだ。

 最後の、第3のカテゴリーは、ロシアの外交目標への貢献を明確に意図している記事である。このカテゴリーの記事の量は、Sputnik 日本が発信する記事全体の半分に満たない。これは、「ロシア政府のプロパガンダツール」との印象を読者に与えないよう配慮してのこととみられる。この点において、ロシアが海外世論に影響を与える手法は、ソ連時代のプロパガンダより洗練されているといえる。

欧米製ワクチンのリスクを誇張

 Sputnik 日本が掲載する記事を注意深く読むと、ロシア政府が日本の世論にどのような影響を与えようとしているのかが見て取れる。

 特徴の1つは、反欧米の姿勢だ。この手の記事は「米国とEU(欧州連合)の力が急速に衰退している」「米国の外交政策は暴力的である」と主張しているものが多い。

 例えば、2020年に発信した「ヨーロッパ崩壊、ドル暴落、ロシアの君臨」はその典型例だ。記事は、サクソバンクというデンマークの銀行の報告に基づいていると主張している。けれども、実際の報告を読むと、欧米経済に関する予測は、Sputnik 日本が伝えるほど悪くはない。正確に報道していないわけだ。

 米国の外交が暴力的であるという印象を与えようとする記事の1つは、2021年4月18日に掲載した「米国の特殊部隊が大統領一家の暗殺を計画」である。この記事は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とその子どもを米国の特殊部隊が暗殺しようとしたと伝えた。この話を、ベラルーシ政権が広めている。ウラジーミル・プーチン大統領も4月21日の年次教書演説の中で同じ主張をした。

 Sputnik 日本が最近取り組む外交目標は、ロシア製の新型コロナワクチンを宣伝し、欧米製のワクチンに関する批判的な話を広めることである。Sputnik 日本は2021年の初めから定期的に、英アストラゼネカ製ワクチンまたは他の欧米製ワクチンのリスクを誇張し恐怖を誘発する記事をヘッドラインにしている。一方で、ロシア製の「スプートニクV」を接種された人々に生じた有害事象については何も報道していない。

 ロシア国営メディアは、他の言語のサイトでも同様の戦術を採用している。EUは4月末、「親クレムリンのメディアは、欧米製ワクチンがもたらす副作用の疑いについて、国際的なメディアの報道を誤って伝えたり、副作用の大きさを誇張したりしている」との報告を発表した。

 もちろん、ロシアの目標は、日本を含む国々に欧米製のワクチンの代わりにロシア製のワクチンを購入させることにある。ロシア政府は経済的にだけでなく米国とのイメージ競争においても利益をもたらすことを望んでいる。

「禁止」より有効な対抗策とは

 ロシア国営メディアは、日本の世論に影響を与えるべく活動を続けているとみられる。だが、現状はまだほんの始まりにすぎない。

 安倍晋三政権がロシアに対し友好的な外交政策を取ったため、日ロ関係は親密度を深める傾向にあった。しかし、日本政府がロシアに対し強い姿勢を取る場合、もしくはなんらかの理由で日ロ関係が緊張する場合、ロシア政府はいつでもSputnik 日本を情報兵器として使用するだろう。例えば、米国の中距離ミサイルの日本配備に日本政府が同意すれば、ロシアはSputnik 日本を使用して、反対デモを醸成する可能性が高い。

 読者のみなさんは、日本が取り得る最も簡単な対抗策は、ロシア国営メディアが日本国内で運営するサイトをすべて禁止することと思われるかもしれない。だが、それは間違いである。日本のような民主主義国の政治システムは、情報の自由な流通を重視する。それを禁止する行為は避けるべきだ。

 「禁止」より適切な対策は、より明確な表示を要求することである。Sputnik 日本とRUSSIA BEYONDが発信するニュース記事のすべてに「ロシア国家当局関係メディア発」のラベルを付ける規制を導入するのだ。Sputnik 日本とRUSSIA BEYONDを読んでいる日本の読者の多くは、この事実を知らない。この状況を変える必要がある。Twitterは既に、このようなラベルをすべてのロシア国営メディアのツイートに付けている。

 日本政府もこうすることで、ロシア政府が広めようとしている紛らわしい情報やプロパガンダから日本の世論を守ることができる。

この記事はシリーズ「世界展望~プロの目」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。