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 ただでさえ保守党の中が強硬離脱派と穏健離脱派に割れていた。これに加えて、北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)との連立という問題を抱え込むことになりました。同党は「英国と北アイルランドは一体であるべきだ」と考える人たちで、EU離脱には「合意なき離脱も辞さない」との姿勢を示しています。メイ首相が進める合意協定案が議会で可決できない一因になりました。

強硬離脱派の首相と議会が対立する可能性も

保守党の新党首選びはどのように展開するでしょう。有力とされるのはボリス・ジョンソン前外相、ドミニク・ラーブ前EU離脱担当相、マイケル・ゴーヴ環境相、ジェレミー・ハント外相が有力視されています。あるオッズによるとそれぞれが新党首となる確率は順に40%、14%、7%、7%です。それぞれはEU離脱についてどのような姿勢をとっているのですか。

山崎:ラーブ氏が最も強硬で「合意なき離脱も辞さない」考えですが、他の3人もEUとの交渉がまとまらなければ、「合意なしの離脱もやむを得ない」との立場のようです。

保守党党首選はどのような手続きで進むのですか。

山崎:3人以上の候補者がいる場合は、党に所属する下院議員の投票で1人ずつ除外していきます。そして2人にまで絞る。この過程で自ら撤退する候補者も出てくるでしょう。2人に絞った段階で党員投票に進みます。保守党の党員は現在10万人ほど。保守党は7月末までには結果を出したいとしています。

やはりジョンソン氏が勝利する可能性が高いでしょうか。

山崎:それは分かりません。確かに、党員の間でジョンソン氏は高い人気を得ています。メイ政権がEU離脱を実現できない中で、党員の間に「なんでもよいからとにかく離脱せよ」という意見が力を得ている事情があります。

 その一方で、支持者と不支持者がはっきり分かれるジョンソン氏に比べて、ゴーヴ氏の方が調整力にたけており期待できるとの見方もあります。同氏は、2016年の国民投票ではジョンソン氏とともに離脱派の顔を務めていました。その後、ジョンソン氏がメイ首相の方針に反発し外相を辞任したのとは対照的に、環境相として閣内に残っています。

 誰が勝利するかは、最後に残った2人の組み合わせにも依存するでしょう。ただ、メイ首相よりも強硬な離脱を主張する人が党首になる確率が高いと言えます。

強硬離脱派が党首となり、首相になると、EU離脱はどのように展開していくのでしょうか。

山崎:一度はEUとの再交渉を試みるのではないでしょうか。

すると、離脱は再び延期になる。

山崎:その可能性はあります。しかしEUは合意離脱案に関する「再交渉は認めない」との立場を崩していません。すると、合意なき離脱の可能性が高まることになります。

 またEU側が新首相を「交渉に足る相手」とみなさないこともあり得るでしょう。その場合はEU側が交渉を打ち切り「追い出し」に進むかもしれません。

 加えて、新政権と英議会との関係も考える必要があります。首相が代わっても議会の構成は変わりません。現在の議会は合意なき離脱には消極的です。首相と議会が対立した時にどうなるのか。その場合、内閣不信任案が提出され可決、これに対抗して新政権が解散・総選挙に打って出るシナリオが考えられます。ただし、議席を失う可能性が高い保守党議員にとって大きなジレンマとなるでしょう。

 英国によるEU離脱は混迷の度を深めるばかりです。