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 そもそも2度目の国民投票は、2016年に行われた国民投票で「離脱」という結果が出たこととその後の展開に批判的な人々が主張していたことですから。「第1回の国民投票は国民が『離脱』して何が起こるかを理解していたかどうか疑わしい」「メイ首相の離脱の進め方には問題がある」などの理由です。したがって保守党内でメイ首相を支持していたグループは国民投票を再度実施すれば「残留」もしくは、メイ首相がまとめた合意協定案以上にEUとの関係を強めた離脱案が多数を占める可能性があると考えました。

 メイ首相は、合意協定案の採決を繰り返す中で保守党内の支持者を徐々に増やしていたのですが、結局、彼らを怒らせてしまった。

今年1月に実施した第1回の採決は賛成202、反対432の歴史的大差で否決。3月12日に実施した2度目の採決は否決されたもの票差は242対391。そして、第3回(3月29日)は286対344。確かに賛成が増えてきていました。

 メイ首相を支持していたグループの不満は大きく、政権の中枢の役割を担ってきたアンドレア・レッドソム院内総務が5月22日に辞任しました。

山崎:そうですね。院内総務は内閣と議会をつなぐ重要な役割を果たしており、その辞任は大きな衝撃となりました。ただ、同氏の辞任は次の党首選に立候補する野心があるからとの見方もあります。同氏は2016年にデービッド・キャメロン首相(当時)の辞任に伴って行われた保守党党首選に立候補しましたが途中で撤退した経緯があります。

仮に国民投票が再び行われたら「残留」が多数を占めるのでしょうか。

山崎:それはやってみないと分かりません。世論調査の結果を見ると状況は拮抗しています。調査によっては「残留」が若干多くなるケースもありますが、2016年の国民投票の時も同様の状況でした。「離脱をいったん決めたのだから進めるべきだ」との考えも根強くあります。

「離脱」の中身を精査する時間をかけるべきだった

メイ首相のこれまでを振り返って、どのように評価しますか。

山崎:「2016年の国民投票で離脱を決めたのだから、これを実現する」という執念はすごいと思います。

EUとの合意協定案が3度も否決。5月に実施された地方選挙でも惨敗。普通だったらとっくに辞めていますよね。

山崎:そうですよね。意志の力が強いな、と思います。

 他方、「他人の意見を聞かない」という評価がよく聞かれます。周囲を説得し、仲間を作って政策を進めていくのが苦手なようです。合意協定案の採決も、「可決しなければ合意なき離脱になる」という「脅し」の色合いが濃いやり方で進めました。

 労働党との協議も、どうせやるならもっと早く始めて、説得に時間をかければ成功していたかもしれません。もちろん、追い詰められて仕方なく選んだ手段だったのでしょうが。

 メイ首相の政権運営を振り返ると、2016年に実施された国民投票の分析にもっと時間をかければよかったのではと思います。

「Leave(離脱)」と「Remain(残留)」の2つの選択肢があり、どちらかを選ぶ形で行われました。結果は「離脱」が52%で、「残留」をわずかに上回りました。

山崎:「離脱」を選んだ人の中には、様々な人がいました。真に離脱を求める人から、単にキャメロン首相が嫌だった人、大英帝国時代にノスタルジーを感じる人……。なので、EUとの離脱交渉を始める前に、離脱を選んだ人の真意を分析する一方、残留を選んだ人々の意見も聞き、EUとの新しい関係をどうするかの判断をするのにもっと時間をかければよかったのではないかと思います。

2017年6月には解散・総選挙に踏み切り、過半数を失いました。これをどう評価しますか。

山崎:あれは失敗でしたね。国民投票で決まった「離脱」を進めていくとアピールすることで保守党の基盤をより強固にすることができると判断したのでしょうが、結果は裏目に出ました。