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英国のメイ首相が5月24日、保守党党首の辞任を表明した。同党は新たな党首選びに歩みを進める。EU離脱について同首相より強硬な姿勢を持つ候補が多い。EUが新首相を「交渉に値しない相手」と評価すれば英国が“離脱させられる”可能性も浮上する。

(聞き手 森 永輔)

英国のテリーザ・メイ首相が5月24日、保守党党首を6月7日に辞任すると表明しました。なぜこのタイミングでの意向表明になったのでしょうか。

山崎:国民投票のやり直しを容認する考えを明らかにしたことで、これまでメイ首相を支持していた保守党議員が離れていってしまいました。これが大きかったと思います。

山崎 加津子(やまざき・かづこ)
大和総研経済調査部 主席研究員
1993年に大和総研入社。欧州経済を担当し、1998~2000年にフランクフルト支所。2000年から欧州資本市場、株式、経済を担当したのち、2011年から現職(写真:加藤 康)

 メイ首相は2019年3月28日、離脱を巡るEU(欧州連合)との合意協定案を議会が可決すれば首相を辞任すると発言していました。第3回目の投票を行う直前です。しかし5月に入り、依然として可決するめどは立たない中で、「党内をまとめきれていない」との批判が保守党内で高まり、6月7日をめどに辞任時期を明らかにするという方向に流れが変わりました。この日は、合意協定案の実質4回目の採決が予定されていた日です。メイ首相はこれが可決されるか否決されるかを問わず、辞任時期を明らかにするよう迫られたのです。

国民投票のやり直し容認が命取りに

 今回、この辞任時期の明確化がさらに2週間早まることになりました。メイ首相が5月21日、この4回目の採決で合意協定案が可決されたなら、2度目の国民投票を実施するか議会に問うと発言したからです。保守党内のメイ首相を支持するグループからも「党首として信頼することができない」との批判が高まり事態が急展開しました。

 メイ首相が国民投票に言及したのは、これを望む議員が多い労働党などの野党の支持を得るためでした。同首相は、保守党内の強硬離脱派の反対で合意協定案が議会を通らないため、3回目の採決の後の4月3日、労働党の賛成を得るべく与野党協議を始めました。しかし、協議は暗礁に乗り上げ、労働党は5月17日、この打ち切りを宣言しました。こうした中でメイ首相は、少しでも野党議員の賛成票を得ようとしたのでしょう。

 しかし、メイ首相を支持するグループはEUとの合意を重視はするものの、基本的に「離脱」を志向する人々です。「残留」が多数となる可能性がある国民投票を受け入れることはできません。