ロックダウン中の上海。住民が消毒を受けている(写真:ロイター/アフロ)
ロックダウン中の上海。住民が消毒を受けている(写真:ロイター/アフロ)

 米欧で反中感情が高まっている。ウクライナ紛争が長引く中、ロシアと中国を一体視する傾向が強まっているからだ。新型コロナウイルスを徹底して抑え込むゼロコロナ政策も不人気。中国でビジネスをする欧州企業の中で、撤退を検討する企業が増えている。米欧企業の従業員レベルでは、中国を離れる動きが既に始まっている。こうした動向は中国向けの投資の縮小を招き、習近平(シー・ジンピン)政権の安定基盤を根底から揺るがす可能性がある。

(聞き手:森 永輔)

瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口):今回は米欧で反中感情が高まっていることについてお話しします。これが中国経済の中長期的な成長力を弱める可能性があります。

 ウクライナ紛争が長引き、ロシアを批判する声が世界中で高まっています。この中で、ロシアと近い関係を続ける中国をロシアと一体視する傾向が強くなり、中国に対する見方も厳しさを増しているのです。

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:加藤 康、以下同)

 中国はロシアに対する軍事的支援や経済的支援を控えており、その行動においては中立を保っていますが、その言動では、対ロシア制裁を強める米国の姿勢を「冷戦思考」と厳しく批判し続けています。いわゆる戦狼(せんろう)外交です。中国のこの姿勢に反発する意見が米国で勢いを得ています。米ピューリサーチが3月下旬に実施した調査によると、中国を「好ましいと思わない(unfavorable)」との回答が82%に達しました。これは、中国のワクチン外交に対する批判が高まった20年3月ごろに記録した79%を上回り、過去最高となりました。

対中投資を縮小させる「感情」と「政策」

 こうした反中感情の高まりは、米国が進める政策にも影響を与えます。米下院が2月4日、米国イノベーション・競争法案を可決しました。半導体の研究開発、製造、試験に520億ドル(約6兆6000億円)の財政支援をするものです。公衆衛生や情報通信技術、エネルギー、食糧といった重要物資のサプライチェーン強化にも450億ドル(約5兆8000億円)を充てます。同様の法案を上院が21年6月に可決しており、議会は両法案の擦り合わせを急ピッチで進めています。この法律が成立すれば、これまで中国に向かっていた投資が米国内に向きを変えることになるかもしれません。

 この傾向は秋に予定される米中間選挙にも影響すると考えられます。候補を決める予備選挙が始まっています。共和党もしくは共和党候補の一部が「台湾独立支持」を打ち出す可能性があります。マイク・ポンペオ前国務長官が、台湾独立支持の発言をしたことを前回取り上げました。これに倣う動きが同党内で広がりつつあるからです。

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