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欧州議会選挙が5月23日に迫った。英国での争点はEU離脱の可否とその手法。これまでEUとの協議を続けてきたメイ首相の与党・保守党への支持は11%にとどまる。大敗すれば同首相の辞任は避けられない。EUの法制度と政策を専門とする庄司克宏・慶応義塾大学教授に聞いた。(聞き手 森 永輔)
華為技術への対応をめぐって米国からも引導を渡されたメイ首相(右)。左はポンペオ米国務長官(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

5月23日から欧州議会*選挙が始まります。英国の投票日は23日。これは英国にとってどのような意味を持ちますか。

*:EU(欧州連合)の立法機関。

庄司:今回の選挙は、英国によるEU離脱(Brexit)の是非とその手法を問う事実上の「再」国民投票になります。また、その結果はメイ政権の退陣をもたらす可能性がある。この意味では事実上の総選挙と言っても過言ではないでしょう。

庄司克宏(しょうじ・かつひろ)
慶応義塾大学大学院法務研究科教授、ジャン・モネEU研究センター所長。1957年生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。専門はEUの法制度と政策。主な著書に『欧州連合』『欧州ポピュリズム』『ブレグジット・パラドクス』がある。(写真:的野弘路)

 23日から始まる選挙は本来、EU(欧州連合)の立法機関である欧州議会の議員を選ぶ選挙です。しかし、投票が国ごとに行われるため、国内の政策が争点になりがちです。今回の英国での投票も、国民を二分してきたEU離脱が最大の争点になります。

 しかも、英国の欧州議会選は比例代表制を取っているため、与党・保守党や、最大野党である労働党以外の政党でも議席が獲得しやすい。よって中小政党の主張も無視できません。総議席数は73です。

各党はEU離脱に対してどのようなスタンスを取っているのですか。

庄司:テリーザ・メイ首相が率いる保守党はいわゆるハードBrexitを志向。EUの単一市場と関税同盟から離脱し、経済関係はFTA(自由貿易協定)にとどめる、というものです。

 一方の労働党はソフトBrexit。EUの関税同盟に残るとともに、単一市場へのアクセスも確保すると主張しています。

ハードBrexitとソフトBrexitの違いは何ですか。

庄司:最も大きいのは主権の制限をどこまで容認するかです。関税同盟や単一市場に残ると主権が制限される度合いが高くなります。例えば、EU加盟国は自動車の排出ガスについて共通の規制を導入しています。一方、FTAならば、参加国は独自の排出ガス規制を採用することが可能です。