米国政治には景気動向が世論に大きな影響を及ぼすが、中国政治では経済動向に加えナショナリズムが影響力を持つ。一方で、ナショナリズムに気を遣いながら米国に毅然とした姿勢をとる必要があり、他方で経済にマイナスの影響が出ないように米国との妥協を考えなければならない。ナショナリズムを無視すれば政権基盤はすぐに弱体化し、経済がうまくいかなければ社会はすぐに不安定化する。

終わりの見えないチキンゲーム

 米中は、世界経済に完全に組み込まれてしまっており、しかも第1位と第2位の経済大国同士だ。簡単にぶつかり合って、それで終わりという話ではない。これが米ソの冷戦構造と根本的に異なる。つまり米中の間には、ともに経済に著しい悪影響を及ぼすことはできないというボトムラインがある。

 だが、力関係は米国に有利だ。交渉が米国優位に進むことも不可避だ。現在の米中交渉は、中国がこれまでやってきた発展パターンの不可逆的修正を米国が求め、それに中国が抵抗する構図となっている。しかも実体経済への影響を可能な限り避けるという暗黙の了解もある。

 しかし、昨年7月以来の制裁関税合戦は状況の変化を生み始めている。つまり当初、米国の制裁発動がどの程度の影響を及ぼすか確信が持てなかった中国当局は、その影響が許容範囲にあることを見定めつつある。今回も民営企業の投資心理の冷え込みに気を配りつつ、政府の刺激策で乗り切ろうとするだろう。そして農業、半導体、車といった分野で米国がさらに嫌がる対抗措置をとるだろう。

 トランプ大統領は、最後は中国からの輸入全てに関税をかけると脅す。中国もそれに屈するわけにはいかない。チキンゲームが続くということだ。結局、それぞれの経済が受ける打撃の程度を判断しながら、どこかで落としどころを見つけるしかない。それには中国も譲歩するが、米国も譲歩せざるを得ない。米国に常に不満が残る。米国は再び新たな材料を見つけ出して中国たたきを続けることだろう。

米国は日欧と共闘せよ

 この米中の対立は経済だけでは済まない。軍事安全保障面での対立はさらに強まり、グローバルガバナンス、つまり国際秩序の構築、運営管理の問題にも及ぶ。米中対立の構図は長期間続く。だが、この対立の構図は、米国が対中認識に修正を加え、中国が方向性を変えることによって、かなり穏やかなものになる。

 米国は、中国がグローバルガバナンスの問題で、現行の国際秩序を護持すると明言し、すでに修正し始めている点を正確に認識すべきだ。米国が日欧と共同戦線を張ることさえできれば、基本はわれわれの望む国際秩序となる。中国が方向性を修正すべきは、1つは経済であり、中国市場をより自由で公正なものとする方向で軌道修正することだ。2つ目は、中国軍の問題だ。今のままで軍拡を続ければ米国だけではなく近隣諸国とも衝突する。中国の安全保障戦略の方向性の修正が必要だ。

 このいずれも、米国だけが中国に迫るより、日米欧を中心とする同じような考えを持つ国々が協力し合うほうが中国に対する効果は大きくなるし、成功する可能性も高まる。

 だがトランプ政権は国際協力に背を向ける。現下の国際社会の最大の問題といえる。

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