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中国・自動車メーカーがマスク製造(写真:新華社/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる米中の舌戦の流れが少し変わってきた。5月7日、中国外交部報道官は「米国国民が新型コロナウイルスとの戦いに迅速に勝利することを望む」と語り、それが見出しとなって中国国内のネットに流れた。翌8日、劉鶴副総理は米国のカウンターパートであるロバート・ライトハイザー通商代表部代表およびスティーブン・ムニューシン財務長官と電話会談を行い、マクロ経済と公共衛生の分野で協力を強化することを語り合った。

 コロナ後の世界について様々な推測がなされているが、米中関係がどういう形に落ちつくのかが決定的に重要な意味を持つことは明らかだ。米国の動きが全体の流れを決めるカギになるが、中国の現状認識および今後の戦略と対応も、その次に重要となる。中国が現状をどう眺め、どう対応しようとしているのか。中国の判断と対応は、どう評価されるべきものなのか。本稿で眺めていきたい。

感染抑え込みに成功したと喧伝し、武漢の失敗を糊塗する?!

 中国は、武漢において新型コロナウイルスの封じ込めに失敗。その結果、感染が世界に広がってしまった。「その後、上手に抑え込んだからといって自慢ばかりせずに、素直に謝るべきだ」。これが恐らく多くの日本人の気持ちであろう。

 確かに中国指導部は2月3日、対応に至らない点があったことを認め、党・政府の指導者の責任を追及すると発言した。しかしその後の発信は武漢のことに触れずに、全国的な抑え込みに成功し、世界のために貴重な時間を稼いでやったという口調に変わった。特に外に向けての発信でこの傾向が強い。中国のように対応できない世界の方が悪い、と言っているように聞こえる。

 これに対し、トランプ政権は中国に責任ありという主張を展開し、ついに米中の口汚いののしりあいになってしまった。同政権がこうした主張に出た背景には、米大統領選があるとはいえ、好ましい応酬ではない。

 これこそが中国の狙いであるという説がある。「発生源はどこか」の論争に持ち込むことで、武漢の失敗を世界に忘れさせようとしているというわけだ。この説は、続いて「マスク外交」を展開することで中国の影響力を強め、最後に新型コロナウイルスの完全封じ込め宣言を発令することで、中国の制度的優位を世界に誇示することを狙っているという。

マスク外交で中国の影響力は高まらない

 だが、この発生源騒動で、武漢における中国の初動ミスを忘れるほど世界は愚かではない。もし中国にそれが可能だと思った人物がいたとすると、浅はかとしか言いようがない。そのような小手先の術策が成功するはずはない。

 「マスク外交」もしかりである。マスクや医療機器を諸外国に送り、医療支援スタッフを派遣すれば自動的に中国の評判が良くなり、影響力が増大するというものではない。ましてや、マスク外交が米中の競争に決定的影響を与えることなどあり得ない。

 中国が輸出したマスクに規格外品が多く含まれ、厳しく批判され、中国政府は、輸出管理に必死に取り組んでいる。鳴り物入りで英国に赴いた山東省のチームは、結局、英国にいる中国人、華僑、中国企業の職員などに防疫教育をし、一部で遠隔診療を行い、必要物資を置いて帰国している。緊急事態下、どの国も関係部門は多忙を極めている。中国から来たお客さんの相手をしている暇はないのだ。