
5月5日、またまたドナルド・トランプ米大統領が驚くべきツイートを行った。今週の米中貿易交渉に進展がなければ、「金曜日(5月10日)に中国の非ハイテク産品2000億ドル分に対する関税を10%から25%に引き上げる」「その他の中国産品3250億ドル分についても近く25%の関税を課す予定である」「対中貿易交渉は続くが、あまりに遅い」と述べたのだ。
同ツイートはロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とスティーブン・ムニューシン財務長官の北京訪問から数日後、中国の劉鶴副首相が100人以上の高官からなる代表団とともに訪米する数日前のタイミングで行われた。トランプ氏がこの時点で突然、中国に事実上の警告を与えた理由については様々な臆測が流れた。各国の株式市場も動揺したのか、軒並み値を下げている。
いずれにせよ、中国は直ちに動いた。米ウォール・ストリート・ジャーナルは「中国が劉鶴訪米の中止を検討中」であり、その理由として、「中国はトランプ氏のツイートに驚いており」「脅迫の下で交渉することを望まない」からだと報じている。米中双方に言い分はあろうが、この交渉、今後もうまくいくとは到底思えない。今回はその理由を書こう。
劉鶴副首相が予定通り訪米するかと問われれば、本稿執筆時点でその可能性は低いと判断せざるを得ない。トランプ氏の脅迫まがいのツイートは交渉上有効な戦術かと聞かれれば、それは逆効果だと思う。近い将来、米中交渉が完全決着する可能性も低いと言わざるを得ない。
まずは、米ニューヨーク・タイムズなどの報道を基に予想される米中合意の概要をまとめてみよう。
- 1)中国は知的財産権保護の強化について追加的約束を行う
- 2)中国は自動車や金融分野で市場アクセスを拡大する
- 3)中国は人民元管理の透明性拡大を約束する
- 4)中国は大豆、天然ガスなど米国産品の大規模購入を行う
- 5)中国はクラウドサービスを提供する米企業の中国内での独立営業を認める
- 6)米中両国は関税の解除の時期と態様につき合意する
- 7)米中両国は合意の効果的実施を確保するための措置につき合意する
いずれも言うのは簡単だが実施の難しい事項ばかりだ。
これ以外にも中国の産業政策、特に地方政府による各種補助金や、中国内で入手したビッグデータの管理を含む知的財産権の取り扱いなど、多くの懸案として残っている。さらに、米中貿易交渉には幾つか構造上の欠陥があるように思える。
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