全6323文字

 輸出は、米中貿易摩擦と米国経済がどう動くか読めず、同様に不透明です*。中国が外商投資法を制定するなど譲歩を見せていますが、これの実効性を検証する仕組みを整えるよう米国が求めています。この交渉が長引く可能性も否定できません。

*:トランプ大統領は5月5日、中国からの輸入2000億ドル分にかける関税率を10%から25%に引き上げると表明した

 投資は緩やかに伸びていくでしょう。通年で7~8%と見ています。不動産は10~15%程度の堅調を維持する見込みです。インフラ投資は地方政府の資金難解消を受けてゆっくり回復し、10~12月期の伸びは7~8%になると見ています。

 投資全体は5~8%程度で底堅く推移するでしょう。中堅中小企業に資金が回るよう図った政策が効いて、設備投資の伸び率がこれ以上は下がらなくなるからです。例えば銀行に課していた、不良債権貸出責任に関する罰則規定が緩和されました。これは不良債権を生み出した銀行員に、その債務返済義務を退職後までも迫るもの。これがあるため銀行員は、信用力の低い中堅中小企業に融資するモチベーションを持つことができませんでした。19年1月以降、違法行為をしていない限り、焦げ付きなどの責任を問わないルールに改めました。

 個人消費は堅調を持続する見通しです。自動車市場は年央からプラスに転じ、通年では18年並み、もしくは若干のプラスになるでしょう。ただし、EV(電気自動車)への転換は一朝一夕には進まず、まだガソリン車が中心です。興味深いところでは、最近、ハイブリッド車の人気が高まっています。

 サービス消費は19年も引き続き教育、医療、レジャーが強いでしょう。

「20年までにGDPを10年の2倍」の目標は達成が堅い

2020年はいかがですか。

瀬口:輸出は改善するとみられます。米中の貿易摩擦も20年に入ればさすがに改善しているでしょう。輸入と設備投資は、5G関連投資が本格化するのとあいまって拡大することが期待されます。

習近平政権は15年、「20年までに実質GDPおよび国民1人当たりの収入を10年の倍にし、国民の生活水準と質を高め、貧困人口をゼロとし、生態環境の質を全体として改善する」と公約しました。実現は堅そうですね。

瀬口:はい。所得倍増は問題なく実現できると思います。

 中国政府が18年からこれまでに打った経済政策が成功しているからです。

 まず公共投資の前倒しが挙げられます。18年12月には地方債の発行枠を決めました。このため、19年に入るとすぐにインフラ投資が動き始めました。従来は3月の全人代を待って枠を決めていたため、1~2月は動きが取れませんでした。

 銀行に課す預金準備率も1月に2度引き下げ、金融を緩和しました。中でも、中堅中小企業への融資に熱心な銀行に対して優先してこれを適用し、融資を促しました。

 個人消費を促す政策も適切でした。個人所得税の減税を18年10月に続けて19年1月に実行しました。10月には基礎控除を3500元から5000元に増額するとともに、低税率を適用する所得層も拡大しました。加えて1月には住宅ローンの利息、老人家族の扶養、子女の教育を控除の対象に加えました。

 一連の政策は、幅が広い一方で「小出し」である点が特徴です。景気を「ふかし過ぎ」ないよう注意を払っているのが分かります。ふかし過ぎると、過剰供給力や過大な債務の削減という構造改革が進まなくなりかねないですから。

 この辺のかじ取りは、劉鶴副首相が担っています。同氏が党と国務院(政府)の要職を兼ね、政策立案と実行を一元化できていることが大きい。習近平政権にとって、同氏のように優秀なテクノクラートがこの時期に存在したことは非常にラッキーだったと言えるでしょう。

教育と中小企業の成長に意を注いでいる点が特徴的ですね。今後、最も重要となるイノベーションを生み出す力を育てようとしていることが読み取れます。こうした一貫性を日本も見習うべきですね。

瀬口:おっしゃる通りです。