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投資と消費は堅調

瀬口:投資は不動産、インフラ、設備投資の3つに分けて説明しましょう。

 19年1~3月期の不動産投資の伸びは11.8%。18年夏に在庫調整が終わり、今はじりじりと価格が上昇している状況です。都市化とともに増大する実需に加えて、値上がりを期待する消費者の需要が拡大。これを見込んで開発業者は投資意欲を高めています。政府による金融緩和がこれを後押ししました。19年1~3月にGDPの伸びが6%割れすることを恐れた政府は、民間投資の背中を押すべく金融緩和姿勢を強めました。このため一部の資金が不動産市場に流れたのです。

 インフラ投資も復調しました。19年1~3月は地方債の発行制限緩和方針を受けて4.4%伸びました。18年10~12月期は、政府が18年中、デレバレッジ(債務縮小)政策を取ったため、地方政府の資金調達が難しくなり3.8%にとどまっていました。

 製造業設備投資は19年1~3月、4.6%と伸び悩みました(18年10~12月期の9.5%)。これもデレバレッジ政策の影響で民間中堅中小企業の資金調達が回復しなかったためです。民間企業製造業に限ってみると、18年10~12月期は10.3%、19年1~3月は3.8%でした。

 個人消費は中国のGDPの65~75%を占める主役です。消費財小売総額の19年1~3月の伸びは8.3%と堅調を維持しました。モノの消費が以前ほど奮わなかった一方で、サービス消費は高い伸びを維持しています。

 大きなウエイトを占める自動車は18年通年の販売台数が▲2.8%と減少しましたが、今年は横ばいまたは若干のプラスにまで回復する見通しです。飲食と衣料の市場もほぼ飽和状態に達しました。サービスでは、特に教育、医療、レジャーが伸びました。住宅は先ほどお話ししたように需要が拡大しています。

中国が豊かになり、「衣」「食」は足りる状態になったわけですね。

瀬口:おっしゃる通りです。

 消費財小売総額の8.3%という伸び数字は見劣りするかもしれません。15~17年にかけて10%台を保った後、18年が9.0%でしたから。しかし、この統計はサービスの消費をほとんど対象にしていませんし、電子商取引も過小に評価する特性があります。この両者は堅調なので、実際の個人消費は8.3%より大きく伸びていると見てよいでしょう。

 堅調な個人消費を支えているのが可処分所得の手堅い伸びです。ずっと6%台で伸びています。

 これには2つの要因があります。一つは人手不足。都市部の有効求人倍率は1.28と過去最高を記録しました。4月に中国を回る中でエコノミストや日本企業の経営者から、次の話を聞きました。「天津や上海で日本企業が撤退しようとすると、以前なら雇用の補償を求められて苦労した。しかし今は、働き先がすぐに見つかるのでもめることがない。米アップルの製品を組み立てる広東省の工場がレイオフに至ったが、近くの自動車工場がすぐに吸収した」。もう一つは個人所得減税です。

2019年は通年で6.2~6.4%に

19年4~6月期以降の展望はいかがでしょう。

瀬口:19年1~3月のGDP成長率が増値税引き下げに伴う特殊要因のせいで6.4%と実勢以上に良かったので、同4~6月期は6.2~6.3%にいったん落ち込むでしょう。しかし、後半は6.3~6.4%と持ち直し、通年では6.3~6.4%になると見込んでいます。

 増値税減税による特需はなくなりますが、輸入の減少は徐々に改善するでしょう。自動車市場は19年1~2月*の▲17%から同3月の▲6.9%へとマイナス幅が縮小しています。昨年の8月以来初めて、マイナス幅が1けたになりました。ロボット市場もストック調整が進んでいます。

*:中国の経済指標は、春節の影響を避けるため1月と2月を合算することがある