
瀬口:今日は、4月16日に行われた日米首脳会談に対する中国の反応と、日中における今後の経済関係についてお話ししたいと思います。
日中首脳会談後の共同声明で、両国の首脳が中国を名指しで批判するとともに、中国が核心的利益とする台湾に言及したことが注目されました。
・経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した
・日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。
・日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。
・日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。
瀬口:この文書を最初に読んだとき、「ここまで言うのか」という印象を持ちました。

キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:丸毛透)
しかし、中国政府の反応は意外にも落ち着いたものでした。翌日の人民日報は、日米首脳会談に対する外交部報道官談話の記事を3面で小さく載せたのみ。テレビのニュース番組も後ろの方で短くコメントしたのみでした。
「両岸問題の平和的解決を促す」は中国批判にあらず
日本が、中国批判のトーンを抑えようとしているのが中国側に伝わったのだと思います。
例えば台湾について、日本が主体的に触れたとは思えません。共同声明には、安全保障に関して、日本側のリクエストと思われる項目がかなり盛り込まれています。例えば、沖縄県尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用対象となること。加えて「核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支援」です。さらに北朝鮮問題についても、「バイデン大統領は、拉致問題の即時解決への米国のコミットメントを再確認した」とあります。
これらの言及に対する"代償"として、台湾に言及するという米国の要望を日本が受け入れたものとみられます。こうした事情を中国は理解したのではないでしょうか。
「両岸問題の平和的解決を促す」という台湾関連の表現も日本が考え抜いたものでしょう。
台湾のある専門家は「中国から見れば、内政干渉に当たる表現だ」と評価しています。
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