感染防止のためマスクを着用して歩く平壌の人々(写真:AP/アフロ)
感染防止のためマスクを着用して歩く平壌の人々(写真:AP/アフロ)

 新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっている。この新型コロナウイルスの感染者が一人も世界保健機関(WHO)に報告されていない国の一つに北朝鮮がある。2020年4月15日時点で、国連加盟国193カ国のうち16カ国で新型コロナウイルスの感染者が確認されていない。その中で、新型コロナウイルスの感染爆発の源となった中国と国境を接しているのは、北朝鮮とタジキスタンだけである。

感染者ゼロの国?

 北朝鮮は、新型コロナウイルスの感染者が確認されていない国の中で最大の人口を持つ。それだけに感染者が出やすいはずだが、なぜ北朝鮮では確認されていないのであろうか。

 結論から言えば、北朝鮮に一人も感染者がいないというのは疑わしい。検査に漏れたか、検査していないだけかもしれない。ただし、北朝鮮が新型コロナウイルスへの強力な対策をかなり早くから実施してきたことは事実であって、感染者がいたとしても、それほど多いとは思われない。では、北朝鮮は新型コロナウイルスに対してどのような対策をとってきたのだろうか。

早かった北朝鮮の水際対策、武漢封鎖に先んじる

 新型コロナウイルス感染者の流入を防止するための水際対策を北朝鮮は非常に早く導入した。まず2020年1月22日までに中国からの観光客の受け入れを全面停止した。中国の武漢封鎖が翌23日であるから相当に動きが早い。

 さらに1月30日には朝鮮労働党と政府の緊急措置によって構成された「非常設中央人民保健医療指導委員会」が、新型コロナウイルス感染症の危険性がなくなるまで衛生防疫システムを「国家非常防疫システム」に切り替えると宣布した。

 国家非常防疫システムの司令塔になった非常設中央人民保健医療指導委員会によって、中央政府と道・市・郡に非常防疫指揮部が組織され、各非常防疫指揮部は国境や港湾、空港など外国との出入り口での検査・検疫に取り組んだ。30日以降の新たな入国者は全て15日間隔離した(1月13日以降の入国者もさかのぼって把握して検診を受けさせた)。住民を対象とする医療監視も強め、感染が疑われる人々の早期発見と入院・隔離政策を始めた。2月1日には北朝鮮に駐在する外交官や国際機関職員などの外国人に対して、大使館と外交官区域を離れることを禁じた。

 これに伴い、国境を封鎖した。1月31日までに中国と北朝鮮を結ぶ全ての航空便と列車を停止する措置を決定し、2月1日までにロシアとの間の全ての航空便と列車を停止する措置も決定した。実際に2月初めには国境を越える全ての航空便と列車の運行を止めた。これによって、北朝鮮と外国との間の人々の往来はほぼ止まった。

 ただし、外国に出張していた北朝鮮人が帰ってくることもあったので、入国者がゼロになったわけではなかった。また、縮小しただろうが、貿易も続けられた。外国からの入国者と輸入物資に対する検診・検疫の担当は、中央衛生防疫所と国家品質監督委員会であった。

続きを読む 2/3 他に類を見ない厳しさ、隔離は30日間に及ぶ

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