「日本は米国の戦略的属国」という見方は妥当だろうか(写真:ロイター/アフロ)

 バイデン米政権が発足して初の日米首脳会談。事前の推測記事はさまざまだったが、終わってみれば、「まずまず合格点」ではなかろうか。ジョー・バイデン大統領が初めて対面で会う外国首脳として、アジアの同盟国・日本の菅義偉首相を選んだこと自体、今後の米外交の方向性を暗示する重要な動きである。アジアはもちろん、欧州や中東の各国も注目したに違いない。今回の首脳会談は新たな時代の外交の始まりを予感させるものだった。

 一方、批判がないわけではない。本邦の一部有力紙には、「日本の受け身外交」「米国に踏み絵を踏まされる」「対中戦略は主体的に」といった論調が散見された。昭和30年代ならいざ知らず、2021年の成熟した日米関係に対し、旧態依然の「対米追随論」を繰り返すのはいかがなものか。これでは「日本は米国の戦略的属国で、対中関係の破壊をもくろんでいる」とする中国外交部のプロパガンダと大差ない。論ずべき問題の本質は別にあると見るべきだ。

 一連の行事が終了した後、ワシントンの中国大使館ウェブサイトは次のような報道官声明を掲載した。
●台湾、香港及び新疆の問題は中国の内政であり、東シナ海及び南シナ海は中国の領土主権と海洋権益に関わる。これらの問題は、中国の根本的利益に関わるものであり、干渉は受け入れられない。我々は、日米首脳による共同声明と関連する表明に強烈な不満と断固たる反対を表明する。

 ほぼ同時期に、東京の中国大使館ウェブサイトも次のメッセージを掲載した。
●日米双方が首脳会談および共同声明において、中国に対し、言われ無き指摘をし、中国の内政に乱暴に干渉し、中国の領土主権を侵犯したことに対し、中国側は強い不満と断固たる反対を表す。

 中国側の「不満」と「反対」は、常に「強烈」で「断固」たるものだから、こうした反応自体に驚きはない。むしろ、中国がかかる立場を表明せざるを得ない背景を分析することで、今回、日米共同声明が言及した「中国との率直な対話」や「中国との協働」の可能性を模索できるのではないか。筆者の問題意識はここにある。日米から見た首脳会談の意義に関する論評はほぼ出尽くした感がある。されば、本稿では中国から見た日米共同声明の問題点を書こう。

中国を「名指し」批判し、台湾・人権にも言及

 今回の日米共同声明は中国を厳しく批判している。改めて該当部分をここに紹介しよう。
●菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。
●日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。
●日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。 

 対中批判はこれだけではない。今回の共同声明は、従来言及したことのない「台湾」や中国国内の「人権問題」にも、以下の通り、あえて触れている。
●日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。(中略)日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した。
●日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。

 当然、誇り高き中国は今回の日米共同声明に怒り心頭だろう。「国際秩序に合致しない中国の行動」「南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張」などと中国が「公然」かつ「名指し」で批判されたからだ。では、中国は今回、不意打ちを食らったのだろうか。そう問われれば、答えは「ノー」だ。こうした対中「名指し」批判を含む表現は、本年3月に東京で開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同文書にたっぷりと書き込まれていたではないか。

続きを読む 2/3 中国はどこまで報復するか

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