RKI「想定シナリオは現実の状況とは無関係」と断言
RKIが8年前に作成し、ドイツ政府が7年前に議会に提出したこの文書は、今年2月に新型コロナウイルスの拡大が始まって以来、ドイツのインターネットの世界で広く流布された。文書が想定したシナリオの中に、現実のパンデミックと似た点があったからだ。一部の市民は、「RKIが8年前に想定したように、今回のパンデミックの死亡率は10%になるのか?」と不安を抱いたに違いない。
しかし、この文書は、あくまでシナリオであり、「予想」ではない。公共放送局バイエルン放送(BR)の3月13日付電子版によると、RKIはBRに対して、「この文書は現在の新型コロナウイルスの流行を予言したものではなく、最悪の事態を想定したシナリオ(つまり1つの可能性)にすぎない。つまり、感染力と致死率が高いウイルスが人から人へ伝播(でんぱ)するようになった場合の、理論的に考え得る最大の被害を予測することが目的だった」と説明している。
さらにRKIは、「8年前に作成した文書には、実際にパンデミックが起きた時に、最悪の事態につながる要因を配慮できるように、あらゆる悪条件や不確定要因を盛り込んだ。したがって、この文書は現在の状況の分析には適していない」と述べている。
つまりRKIのウイルス学の専門家たちは、「パンデミックが最もひどくなった場合、理論的にはドイツで750万人の死者が出る可能性があるが、そうした事態が必ず起こると主張したわけではない」と説明しているのだ。
ワーストケース・シナリオとは、最も被害が大きくなるケースのことだ。RKIは、「そうした事態が実際に起こる」あるいは「最悪の事態が起こる可能性が高い」と予想したわけではない。またRKIは、文書の中で「そうした事態が実際に起こるかどうかはわからないし、パンデミックがいつ起こるかは予測できない」と断言している。
ドイツの死者数は、4月20日時点で約4600人。同国が3月23日に施行した罰則付きの外出・接触制限令によって市民の移動は約40%減った。RKIによると、3月9日からの1週間には、ドイツの感染者数は1.7日ごとに倍増していた。だが4月12日には、倍増にかかる日数が18.3日に延びている。つまり外出制限令が発布されてから、感染者数が増える速度が遅くなり始めているのだ。
ドイツ政府が新型コロナウイルスの危険性を強く認識して厳しい対策を取り始めているので、仮にパンデミックが長期化しても、現在の死者数が750万人まで急増する可能性は低い。ドイツ政府は、他国に先駆けて、ウイルス封じ込め措置の部分的な緩和すら始めた。メルケル政権は、ロックダウンによる経済界への悪影響を減らすために、4月20日から面積が800平方m以下の商店の営業を許したほか、5月4日からは学校での授業を段階的に再開する方針を明らかにしている。
BRは、「RKIの文書は、あくまで最悪の事態を想定したものであり、それが現実化するという予測ではない。『ドイツで750万人が死亡し、死亡率が10%に達する』という文書の中の想定は、現実の状況にあてはめられない。この文書と、現実の展開を関連付ける行為は、フェイクニュースの流布だ」と結論付けている。
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