米国が再び世界に力をみせつけました。これには驚きました。

 米国のジャネット・イエレン財務長官が4月5日、法人税において共通の最低税率を設定するよう主要国に提案。バイデン政権はこれに続けて、国境を越えて活動する巨大多国籍企業を対象とする新たな税の提案をしました。

 この2つの提案は、経済協力開発機構(OECD)が法人税の国際ルールを見直すべく提案していた「2つの柱」とほぼ整合するものです。第1の柱はいわゆるデジタル課税。第2の柱は法人税における共通の最低税率の導入です。

森信茂樹(もりのぶ・しげき)
東京財団政策研究所研究主幹。中央大学法科大学院特任教授。専門は租税政策、財政政策。
1950年生まれ。1973年、京都大学法学部を卒業し、大蔵省(現・財務省)に入省。主税局総務課長、東京税関長、財務省財務総合政策研究所長を歴任。2006年に退官し、現職。近著に『デジタル経済と税 AI時代の富をめぐる攻防』など。(写真:加藤 康)

 OECDの提案は、トランプ政権が消極的な姿勢を示したため、「まとまらないだろう」という空気が支配的になっていました。しかし、バイデン政権が方針を転換し、新たな提案をしたことで事態が急展開。OECD加盟国の間で協調の雰囲気が生じ、まとまる方向に再度動き始めました。今年7月までにOECDおよび20カ国・地域(G20)で大筋合意に達する可能性が十分にあります。

 OECDの提案は、(1)GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)をはじめとする巨大テック企業が法人税率の低い国やタックスヘイブン(租税回避地)を利用して税の支払いを回避、(2)これが1国の中だけで活動する企業との間で公正な競争を阻害、といった事態を解消すべく考えられたものです。こうした国際的な課題が解決に向かうことになります。

 米国が法人税の国際ルールの見直しに対し積極姿勢に転じた背景には、米国特有の身勝手さがあります。バイデン政権は巨額の財源を必要とする政策を次々と打ち出しました。3月には、1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナ対策を始動。続く4月には、2兆ドル(約220兆円)の資金を投じる成長戦略(期間は8年)を発表。これらを賄うための財源が必要で、議会で法案を通過させるためにはOECD合意が必要と考えたのでしょう。

 また、OECD合意が得られなければ、GAFAの順調な成長が妨げられる恐れもあるので、それを事前に回避したいとの意向もあるでしょう。OECDでの議論が進まないことにしびれを切らした英国やフランスが独自にデジタル課税を導入しました。これらは売上高が課税対象なので、赤字でも課税されるなど多くの問題があります。

続きを読む 2/2 ここで合意に至らなければ……

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り380文字 / 全文1431文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「世界展望~プロの目」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。